第2080話 2020/02/10

観世音寺「大宝四年縁起」の証言

 観世音寺の創建を通説では、『元亨釈書』に見える落慶法要記事を根拠に天平18年(746)としています。しかし、創建が更に遡ることを示す史料は少なくありません。今回は、「観世音寺注進本寺進上公験等案文目録事」という史料を紹介します。
 観世音寺は度重なる火災や大風被害のため貧窮し、独力での復興は困難となったため、保安元年(1120)に東大寺の末寺となったのですが、そのおり、東大寺に提出した観世音寺の文書案文(写し)の目録が存在します。それが「観世音寺注進本寺進上公験等案文目録事」ですが、同目録中には注目すべき書名があります。「大宝四年縁起」です。大宝四年(704)に成立した観世音寺の縁起があるということは、それ以前に観世音寺は創建されていたことを意味します。
 なお現在、観世音寺に同縁起は伝わっておらず、関連文書として最も古いものでは延喜五年(905)成立の『観世音寺資財帳』があります。九州王朝の中心的寺院であった観世音寺の縁起は近畿天皇家一元史観によって書き直され、あるいは破棄されたのではないでしょうか。

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