第637話 2013/12/22

平成25年の回顧

 平成25年ももうすぐ終わります。この一年間、古田史学や「古田史学の会」では様々な出来事がありました。個人的な感想となりますが、特に印象深かったことを並べてみます。

1.古田先生の研究自伝『真実に悔いなし』発刊
 ミネルヴァ書房より発刊された同書は古田先生自らにより研究活動やその生い立ちが記されたもので、先生や先生の学問を学ぶ上で、わたしたち古田学派の学徒にとって宝物ともいえる貴重な一冊です。

2.「I-siteなんば」に古田武彦コーナー開設
 大阪府立大学のご協力と正木裕さんのご尽力により、大阪府立大学なんばキャンパス「I-siteなんば」に古田武彦コーナーが開設されました。古田先生や会員のご協力により、古田先生の著作や古代史関連の貴重な書籍を「I-siteなんば」図書館に寄贈しました。「古田史学会報」や『古代に真実を求めて』も全冊並んでおり、古代史や古田史学を学ぶ人々にとって貴重な研究拠点となりました。また、併設された研究ルームや会場を「古田史学の会」としても利用させていただくことにしました。これにより関西例会などの会場確保も便利になりました。近くに飲食街もできましたので、関西例会後の懇親会も便利になり ました。

3.正木裕さんの研究「倭人伝官職名と青銅器」
 本年も会員による優れた研究が数多く発表されましたが、中でも衝撃的だったのが正木裕さんが発表された、倭人伝の官職名と青銅器の関連についての研究でした。倭人伝研究における新たな分野を切り開いた研究として、大変優れていました。

4.「赤渕神社縁起」の九州年号
 森茂夫さん(「古田史学の会」会員、京丹後市在住)から、『赤渕神社縁起』をはじめとする「赤渕神社文書」の釈文(当地の研究者により活字化されたも の)の写真ファイルが送られてきました。それには九州年号の「常色」「朱雀」などが見え、しかも天長五年(828)の成立という平安時代にまで遡る九州年号史料でした。今後これら赤渕神社史料(兵庫県朝来市)により九州年号・九州王朝の研究が加速されることでしょう。本当に素晴らしい史料が残っていたもの です。

5.『伊予三島縁起』の九州年号「大長」
 齊藤政利さん(「古田史学の会」会員、多摩市)が内閣文庫に赴き写真撮影していただいた『伊予三島縁起』(番号 和34769)に「大長九年壬子」とあ り、従来は「天長」と記されていた『伊予三島縁起』とは異なり、より原型を留めていることがわかりました。最後の九州年号「大長」の確かな史料根拠が発見されたことにより、滅亡期の九州王朝研究が進むことが期待されます。

6.会員・知人の訃報
 大変悲しいことに、本年は数十年来の古田説支持者だった難波収さん(オランダ・ユトレヒト市、天文学者)、鶴丈治さん(「古田史学の会・北海道」前会長)が亡くなられました。また、古田先生の松本深志高校時代の教え子だった中嶋嶺雄さん(国際教養大学学長)も亡くなられました。中嶋さんにはわたしの二倍年暦の研究論文の英訳にお力添えいただきました。心よりご冥福をお祈りいたします。

 以上、思いつくままに記しました。この他にも福岡県古賀市出土馬具など考古学的発見も印象的なニュースでした。古田史学・九州王朝説の正しさが事実でもって明らかになりつつありますが、この国の学界やマスコミは果たしていつまで「無視」が続けられるでしょうか。わたしたち古田学派の一層の努力と研究があらたな古代史の新時代を切り開くことでしょう。新年が素晴らしい一年であることを願っています。

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