第648話 2014/01/23

「市民の古代研究会」の拡大路線

 わたしは仕事で愛知県一宮市に行くことが多いのですが、時間待ちの際に利用するのが、真新しい一宮駅ビルの5~7階にある市立図書館です。お気に入りの図書館の一つなのですが、その理由は交通の便が良いこと、新しくきれいなこと、そして何よりもミネルヴァ書房から刊行されている古田武彦シリーズが全冊並べられていることです。そうしたこともあり、『古代に真実を求めて』16集を寄贈させていただきました。一宮市民の皆さんの目に留まれば幸いです。

 さて、1990年代に急拡大した「市民の古代研究会」でしたが、組織拡大のため、わたしはマーケティング論でいうところ の、STP戦略をフル活用しました。セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングというもので、活動領域は主に「日本古代史」、獲得すべきター ゲットは「古田ファン・読者」、ポジショニングは多元史観・古田説による旧来の一元史観古代史との「差別化」でした。
 こうした基本戦略は、古田先生の人間的魅力と古田史学が持つ圧倒的な論理性・説得力を背景に、極めて有効にはたらき、期待した通りの成果を達成できました。このときわたしは会員拡大のスピードをあげるために、少し危険な方法を採らざるをえませんでした。それはターゲットを「古田ファン・読者」を中心とし ながらも、「古田史学に関心のある一般の古代史ファン」にも広げたのです。そうすることにより、ターゲットが広がり、会員拡大の成果を出しやすくなりま す。
 そうしたもう一つ理由に、何年も200人程度で推移していた会員数が急速に増えたことに「目がくらんだ」一部の理事から、古田説支持・不支持とは無関係にもっと会員を増やせという声が出始め、そうした意見にわたしは苦慮し、その妥協策として「古田ファン・読者」を中心に「古田説に関心を持つ古代史ファン」というターゲット層の拡大案を出すことにより、組織の「古田離れ」をくい止めようとしたのです。今から思えば、こうした会員数急拡大が一部理事の錯覚 (思い上がり)「古田武彦なしでも会員は増える」をもたらしたのかもしれません。
 しかし、このターゲット層の拡大が「市民の古代研究会」失敗の直接の原因ではありませんでした。より決定的な原因は理事会の「変質」にありました。(つづく)

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