第883話 2015/02/26

倭人はお酒好きで

   美人が多い?

 今日の午前中は二日市市にある福岡県工業技術センターを訪問し、同センターの堂ノ脇靖巳さんと旧交を暖めました。堂ノ脇さんはタンパク質のトリプトファン発色反応をウールやシルクに応用し、染料による染色ではなく、ウールやシルクそのものを化学反応で発色させ、衣料品に用いるという画期的な技術(中小企業庁長官賞受賞)を開発された優れた化学者です。十数年前、京都大学で開催された繊維学会でお会いして以来、同郷の化学者同士として、あるいはビジネスでもおつきあいをさせていただいています。
 午後からは新幹線「さくら」で大阪まで戻り、繊維応用技術研究会(事務局:大阪府立産業技術研究所)の理事会に出席しました。理事会の皆さんと夕食をご一緒したのですが、話題が古代史にも及び、盛り上がりました。理事全員が科学研究者ですので、様々な観点から『三国志』倭人伝の記事について持論が展開されました。特に拝聴したのが花王のヘアケア研究所のKさんの次のご意見でした。

1.倭人伝には女性のヘアスタイルに関する記事があることから、倭人の女性はおしゃれに興味があり、その結果、おそらく美人が多かったのではないか。
2.倭人はお酒が好きと書いてあるので、「邪馬台国」はお酒好きの地方にあったはず。
3.「博多美人」という言葉はあるが「奈良美人」というのは聞いたことがない。
4.博多と奈良に出張で行くことがあるが、博多の人の方が圧倒的に「飲兵衛」が多い。
5.従って、「邪馬台国」九州説(博多説)に賛成する。

 以上のような持論を開陳されました。学問的な論証としては「問題」が少なくないのですが、ヘアケアの専門家らしい視点だと思いました。
 言われてみれば、倭国へのプレゼントとして倭人伝に特記されている「鏡」(倭人の好物)や「錦」(シルク製品)など、いずれも女性が喜びそうなプレゼントです。そして当時の倭国は女王卑弥呼・壹与の時代ですから、女性が喜ぶような品々を中国側は意図して贈ったのかもしれません。学問的かどうか全く自信はありませんが、このような視点が古代史研究にあってもよいのではないでしょうか。
 花王のKさんに、そのご意見を「洛中洛外日記」に書いてもよいかと確認したところ、「OK」のご返事をいただいたものの、奈良県での花王の化粧品の売り上げが落ちたら申しわけないような気持ちです。あくまで食事の席での個人的見解ですので、大目に見てあげてください。なお、理事会に同席され、Kさんやわたしの会話を聞いておられた業界誌のS社長から、今の話を自社の雑誌のコラムに連載して欲しいとのご要望をいただきました。もちろん、わたしの返事は「OK」でした。

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