第894話 2015/03/10

神籠石築城は

プレカット工法(2)

 比較的小さな石を使用する「石垣」タイプとは異なり、神籠石タイプはあの大石を山上や中腹の急斜面に並べるのですから、その運搬に大変な労力が必要です。それにもかかわらず九州王朝が神籠石タイプを採用した理由があるはずです。わたしはその理由をずっと考えてきたのですが、現在は次のように考えています。
 すなわち、中国(隋・唐)からの侵略の脅威に備えて、「同時期多発」で首都太宰府や各地の主要都市防衛の山城築城に迫られたが、「石垣」タイプ築城に必要な大量の石組工人を確保できなかったため、比較的簡易に築城できる神籠石タイプを採用したのではないでしょうか。
 大石の運搬は大変ですが、石切場で同じサイズに加工された石であれば、現地に運搬した後は並べるだけでよいのですから、これなら指導的工人が少人数でも築城が可能だからです。すなわち石材のプレカット工法を九州王朝は採用したのです。事前に寸法通りカットされた石材であれば、山頂や急斜面での石材の加工場所は不要ですから、ある意味では合理的な工法なのです。
 これは現代日本でも同様で、熟練した大工さんが少なくなったため、あらかじめ工場でカットされた建材が建築現場に運び込まれ、基本的な骨組部分は組み立てるだけでよいプレカット工法により、大量の住宅建設が可能となったのです。(つづく)

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