第1317話 2017/01/03

年頭雑感、「酉年」考

 今年の干支「酉(とり)」にちなんで、鳥の名前を用いた九州年号(倭国年号)について考えてみました。九州年号(倭国年号)は九州王朝(倭国)の歴史を研究するうえで貴重なヒントを与えてくれます。九州年号には中国の王朝や大和朝廷の年号とは異なり、仏教に関するものが散見されます。僧聴・僧要・法清などです。九州王朝が仏教を深く崇敬していたことは『隋書』イ妥国伝にも見えるとおりです。

 「敬佛法、於百濟求得佛經、始有文字。」
 (仏法を敬い、百済で仏教の経典を求めて得、初めて文字を有した。)『隋書』イ妥国伝

 ところが前期難波宮が完成した652年からそれまでとはがらっと変わって、鳥の名前が年号に用いられ始めます。次の通りです。

 白雉(652〜660年)
 白鳳(661〜683年)
 朱雀(684〜685年)
 朱鳥(686〜694年)

 最初の鳥名年号「白雉」改元の年に、日本列島最初の朝堂院を備える北闕様式(北に宮殿を置く都城)の前期難波宮が完成しています。わたしは前期難波宮を九州王朝の副都と考えていますから、この頃に九州王朝の政治思想が変化し、初めての北闕様式の王都・王宮を造営し、九州年号もそれまでの仏教色を有するものなどから鳥名年号に変えています。とりわけ、「白鳳」や「朱雀」は天子にふさわしい鳥名の年号です。この時期、九州王朝に何が起きたのでしょうか。
 なお、今年は九州年号「継体」(元年、517年丁酉)が建元されて1500年になります。今春、『失われた倭国年号《大和朝廷以前》』を発刊しますが、偶然とはいえ幸先の良い一年になりそうです。(つづく)

フォローする