第1494話 2017/09/03

須恵器窯跡群の多元史観(5)

 初期須恵器窯跡の分布から判断して、東北の仙台市にある大蓮寺窯跡を蝦夷国の中枢領域への須恵器供給のためのものと推定していますが、同地域に東北地方最大の前方後円墳があることも何か関係がありそうです。
 東北地方最古の須恵器窯跡とされる大蓮寺窯跡は、古墳時代中期中頃(5世紀中頃)と編年されていますが、それよりも半世紀ほど前に仙台市内最大の前方後円墳である遠見塚古墳(墳丘長110m、4世紀末〜5世紀初頭)が築造されていますし、隣接する名取市には東北地方最大の雷神山古墳(墳丘長168m、4世紀末〜5世紀初頭)もあります。このことから仙台平野や名取平野が古墳時代において、東北地方を代表する王権の所在地であったことがうかがえます。
 一元史観ではこのことをもって、大和朝廷の影響がこの時期に仙台地方まで及んでいた根拠としますが、古田史学・多元史観から考えると、九州王朝の影響が直接的あるいは間接的に当地に及んだということになります。とすれば、蝦夷国が初期須恵器や前方後円墳などの墓制を受容したか、九州王朝系勢力が当地にまで進出していたということになりそうです。そうしますと、蝦夷国に対して抱いていた従来の印象が大きく変化するのではないでしょうか。(つづく)

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