第2170話 2020/06/20

「倭」の名を悪(にく)んだ王朝

 本日、四ヶ月ぶりに「古田史学の会」関西例会が開催されました。司会の西村秀己さん(古田史学の会・全国世話人、高松市)はコロナ禍の影響により参加できないとのことで、正木裕さん(古田史学の会・事務局長)が進行を担当されました。皆さんの元気なお顔を久しぶりに拝見でき、とても嬉しく思いました。インターネットやFACEBOOKを見て初参加された方も数名おられ、論議も活発になされました。なお、7月もドーンセンターで開催します。
 今回も意表を突いた仮説や半信半疑の面白い仮説、なかなか決着がつかない論議など、今まで以上に関西例会らしい学問的刺激に満ちた例会となりました。中でも「なるほど」と思ったのが、『新唐書』の記事にある「咸亨元年(670)―倭の名を悪(にく)み更め日本と号」した国は大和朝廷ではないという服部さんの指摘でした。大和朝廷は自らの都をおいた本拠地(奈良県)の地名「やまと」に「倭」「大倭」の字を当てており、天武や持統らは「倭」の字を忌避していないとされたのです。言われてみれば「目から鱗」の指摘でした。その上で、咸亨元年(670)に国号を日本に変更したのは近江朝にいた九州王朝の天子とそれを補佐する天智とされました。
 服部説の登場により、七世紀後半の倭国内の権力状況がいかなるものであったのか、諸仮説が少しずつ同方向に収斂しているように感じました。
 今回の例会発表は次の通りでした。なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。発表希望者も増えていますので、早めに西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔6月度関西例会の内容〕
①天武天皇は筑紫都督倭王だった(八尾市・服部静尚)
②半熟卵と半殺し(大山崎町・大原重雄)
③宇佐八幡宮をめぐる諸問題について(茨木市・満田正賢)
④「女王国より以北」の論理(姫路市・野田利郎)
王の都の位置の諸問題(神戸市・谷本 茂)
⑥『隋書』国伝を考える(その4)(京都市・岡下英男)
⑦九州王朝と大和政権の関係について(たつの市・日野智貴)
⑧九州王朝説と乙巳の変(川西市・正木 裕)
⑨北魏孝文帝も「周制(短尺系)に復帰」した(川西市・正木 裕)

◆「古田史学の会」関西例会(第三土曜日開催) 参加費500円
 07/18 10:00~17:00 会場:ドーンセンター

《各講演会・研究会のご案内》

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 06/23(火) 10:00~12:00 (会場:奈良県立図書情報館)
    「古代の疫病と九州王朝の対外戦争」 講師:正木 裕さん。
 07/28(火) 13:00~17:00 (会場:奈良県立図書情報館)
    「聖徳太子(多利思北孤)と九州王朝①」 講師:正木 裕さん。
 08/18(火) 13:00~17:00 (会場:奈良県立図書情報館)
    日本書紀完成1300年記念講演会
    「『日本書紀』に息づく九州王朝」講師:古賀達也
    「箸墓古墳の本当の姿」講師:大原重雄さん
    「吉野行幸の謎を解く」講師:満田正賢さん
    「壬申の乱の八つの謎」講師:服部静尚さん
    「『海幸・山幸神話』と『隼人』の反乱」講師:正木 裕さん
 09/29(火) 13:00~17:00 (会場:奈良県立図書情報館)
    「聖徳太子(多利思北孤)と九州王朝②」 講師:正木 裕さん。

◆「古代史講演会in八尾」(会場:八尾市文化会館プリズムホール 近鉄八尾駅から徒歩5分) 参加費500円
 09/12(土) 14:00~16:30  ①「九州王朝」と「倭国年号」の世界 ②「盗まれた天皇陵」 講師:服部静尚さん。

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