第2201話 2020/08/10

滋賀県甲良町西明寺から飛鳥時代の絵画「発見」

 本日の京都新聞web版によると、滋賀県甲良町の古刹西明寺本堂(国宝、鎌倉時代)の柱に書かれていた菩薩立像が飛鳥時代(592―710)に描かれたもので、国内最古級の絵画であることが判ったとのこと。湖東の甲良町には天武の奥さんで高市皇子の母である尼子姫が筑後の高良大社の神を勧請したとされる高良神社(御祭神は武内宿禰)があり、以前から注目してきたところです(「洛中洛外日記」147話 2007/10/09〝甲良神社と林俊彦さん〟参照)。
 湖東には九州王朝との関係をうかがわせる旧跡や伝承(「洛中洛外日記」2014/10/25 〝湖国の「聖徳太子」伝説〟参照)があり、近年は創建法隆寺(若草伽藍。天智9年〔670〕に焼失)と同范瓦(忍冬文単弁蓮華文軒丸瓦)が栗東市の蜂屋遺跡から出土しています(「洛中洛外日記」~80話 2018/11/03-4 滋賀県蜂屋遺跡出土の法隆寺式瓦1-2参照)。
 今回「発見」された仏画が九州王朝の時代である七世紀に遡るのであれば、九州王朝や多利思北孤との関係を考えてみる必要がありそうです。

【転載】京都新聞社 2020/08/10 16:57
1300年以上前の絵画を「発見」、日本最古級か
黒くすすけた柱から赤外線撮影で確認 滋賀・甲良の寺

 湖東三山の一つ、西明寺(滋賀県甲良町池寺)の本堂内陣の柱絵を調査・分析していた広島大大学院の安嶋(あじま)紀昭教授(美術学史)は9日、絵は飛鳥時代(592―710)に描かれた菩薩(ぼさつ)立像で、描式から日本最古級の絵画とみられると発表した。834年とされる同寺の創建前で、創建時期が大きくさかのぼる可能性があるとも指摘した。
 菩薩立像は、本堂内陣の本尊・薬師如来像前にある西柱と南柱に描かれていた。柱は黒くすすけ、これまで何が描かれているのか分からなかったが、昨年6月、周囲の仏像を移動させ、高さ3~4メートルに描かれた絵を赤外線で撮影することができた。
 分析の結果、両柱(直径約45センチ)には、菩薩立像が4体ずつ描かれていた。薬師如来像をたたえるように力強い筆致で、背景には雲塊や唐草文もある。青や緑、朱などの顔料が使われ、当時は極彩色だったという。
 安嶋教授によると、像は長身で細面で線が太い。耳の中や手のひらの描き方は単調で、隋代(581-618)の描法の特徴を表している。飛鳥時代に描かれた法隆寺の国宝・玉虫厨子(たまむしのずし)の扉の菩薩像に酷似しているといい、「絵画としては日本最古級」とした。寺周辺には東大寺の彩色を担当した渡来系の画工集団・簀秦画師(すのはたのえし)が居を構えていたことから、「彼らによる仕事では」とも推測した。
 西明寺の中野英勝住職は「本堂自体が国宝だが、絵画にも注目してほしい」と話した。

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