第2251話 2020/10/06

ベティー・J・メガーズ博士の想い出(3)

 縄文人が太平洋を渡り、縄文土器がバルディビアに伝播したとするメガーズ説の論点の一つ、「バルディビア土器が南北アメリカで最古の土器」については検証が必要と大原重雄さん(『古代に真実を求めて』編集部)から教えていただきました。1995年の「縄文ミーティング」当時も小林達雄さん(国学院大学教授)は、コロンビアのサン・ハシント(San Jacinto)出土土器とアマゾン川流域の貝塚出土土器がバルディビア土器より古いと指摘されていました。しかしその詳細をわたしは知りませんでした。
 今回、大原さんから教えていただいたのは、次の二つの出土事例でした。一つは、ブラジル北部アマゾン川下流のサンタレン(Santarém)の先史時代の貝塚出土土器。もう一つはバルディビアの南数十kmにあるサン・ペドロ複合遺構(San Pedro complex)から出土した土器です。中でもサンタレン出土土器は約8000年から7000年前のものとされており、南米では突出して古いものです(注)。
 サンタレン出土土器の写真をわたしはまだ見ていませんので、断定はできませんが、バルディビア土器の文様は、「太平洋を渡った縄文土器」と「南米大陸を横断したサンタレン土器」の、どちらの伝播・影響によるのかがこれからは問われることでしょう。(つづく)

(注)アンナ・C・ルーズベルト、ルパート・ハウズリー「ブラジルアマゾンの先史時代貝塚からの第8ミレニアム土器」(〝Eighth Millennium Pottery from a Prehistoric Shell Midden in the Brazilian Amazon〟Science 254、1992)では、その土器の年代について次のように報告(要約)されている。
 「西半球でこれまでに発見された最も初期の土器は、ブラジルのアマゾン川下流サンタレン(Santarém)近くの先史時代の貝塚から発掘された。木炭・貝殻・土器の校正済み加速器放射性炭素年代測定と、出土土器の熱ルミネセンス年代測定では、約8000年から7000年前を示した。」(古賀訳)

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