「 書籍 」一覧

第829話 2014/11/29

『太平記』の藤原千方伝説

 今日は午後からお天気になりましたので、近くの相国寺さんを散策しました。法堂の真っ白な漆喰と真っ赤に紅葉した木々がとてもきれいでした。

 「洛中洛外日記」793話の「佐藤優『いま生きる「資本論」』を読む」で、16世紀に日本に布教に来た宣教師たちがマカオで印刷された日本語版『太平記』を読んで日本語を勉強していたことを紹介し、わたしも『太平記』を読んでみたくなったと書きました。そうしたら水野代表 が『太平記』を関西例会に持参され、貸していただきました。大正六年発行のかなり年期の入った『太平記』(有朋堂書店)上下2冊本で、「有朋堂文庫(非売 品)」とあります。
 面白そうな所から拾い読みしていますが、巻第十六の「日本朝敵事」に不思議な記事がありました。天智天皇の時代に藤原千方(ふじわらのちかた)という者 が四鬼(金鬼・風鬼・水鬼・隠形鬼)を従えて伊賀と伊勢で反乱を起こしたという伝説です。朝廷から派遣された紀朝雄(きのともお)により鎮圧されますが、 天智の頃ですから九州王朝の時代です。『日本書紀』などには記されていませんので、史実かどうか判断できませんが、九州王朝説により解明できないものかと思案中です。なお、「天智天皇」を「桓武天皇」とする写本もあるようですが、実見していません。
 伊賀地方では今でも藤原千方に関する旧跡が残っているとのことで、当地では有名な伝説のようです。『太平記』にはこの他にも面白そうな記事があり、少しずつでも読み進めようと思います。以上、今回は軽い内容の「洛中洛外日記」でした。


第681話 2014/03/21

「古典的名作」を観る、読む。

 わたしは恥ずかしながら、どちらかというと古典的文学作品や名作を観たり読んだりするほうではありませんでした。さすがに還暦が近づいてきましたので、少しは人類史上の古典的名作に触れる機会をつくろうと、一念発起しました。とは言え、いきなり長編大作を読む自信もなかったので、昨年の春に公開された映画「アンナ・カレーニナ」を観ました。ロシア文学の最高傑作といわれているトルストイの恋愛小説を、舞台劇形式で見事に映画化された作品でした(ジョー・ライト監督、イギリス映画)。また、主演女優のキーラ・ナイトレイがとても美しく、悲しく映し出されており、最後まで見入ってしまいました。そして何よりも、登場人物の発する一言一言が深く胸に残り、原作の素晴らしさを感じさせられました。
 もう一つ挑戦した古典的名作は、マックス・ウェーバー著の『職業としての学問』です。こちらは学生時代に挑戦しましたが、難しすぎて全く歯が立たなかった記憶があります。あれから40年もたっていますので、少しは理解できるのではないかと、岩波文庫版を購入し読んでみましたが、やはりダメでした。その難解な表現のために、ウェーバーの真意をなかなか正確に深く読みとることができません。成長していない自分が少し悲しくなりましたが、それでも次のような部分には、その言わんとする本質とはおそらく無関係に共感を覚えました。

 「学問に生きるものは、ひとり自己の専門に閉じこもることによってのみ、自分はここにこののちまで残るような仕事を達成したという、おそらく生涯に二度とは味われぬであろうような深い喜びを感じることができる。(中略)ある写本のある箇所について『これが何千年も前から解かれないできた永遠の問題である』として、なにごとも忘れてその解釈を得ることに熱中するといった心構え--これのない人は学問に向いていない。そういう人はなにかほかのことをやったほうがいい。いやしくも人間としての自覚のあるものにとって、情熱なしになしうるすべては、無価値だからである。」(岩波文庫『職業としての学問』22頁)

 この本は、今から約100年前の1919年にミュンヘンで学生たちに向けて行った講演の記録です。この部分を読んで、わたしが『古事記』写本の「治」や「沼」について「なにごとも忘れてその解釈を得ることに熱中」しているのは、学問に向いている証かもしれないとひとり喜んでいます。
 まだまだ不十分な理解にとどまっていますが、ウェーバーの『職業としての学問』から、多くの示唆を得ることができそうです。どなたか、この本についての解説を関西例会で講義していただければ、有り難いと思います。


第595話 2013/09/14

古田武彦著『失われた日本』復刻

 ミネルヴァ書房より古田先生の『失われた日本 — 「古代史」以来の封印を解く』が「古田武彦古代史コレクション17」として復刻されました。同書は1998年に出版された本で、わたしにとっても特に印象に残る一冊です。
 冒頭の第1章「火山の日本-列島の旧石器・縄文」は「二つの海流に挟まれた火山列島、それが日本である。この事実がこの国の歴史を規定してきた。日本人 には、そしていかなる権力者といえども、この運命をまぬがれることはできないのである。」という印象的な文章で始まります。
 そして各章には古田史学の中心的テーマがコンパクトにまとめられており、その学説の真髄がよく理解できるよう配慮されてます。そうしたことからも、古田ファンや古田史学の研究者の皆さんには是非ともお手元においていただきたい一冊です。たとえば、第8章「年号の歴史批判 — 九州年号の確証」は年号研究の基礎的認識を深める上でも、とても重要な論文です。わたしも、読むたびに新たな刺激を受けています。
 最終章の「歴史から現代を見る」は本居宣長批判や村岡典嗣先生の研究にもふれられており、日本思想史上でも重要な論文です。村岡先生の写真なども掲載されており、貴重です。
 そして同書末尾には、復刻にあたり書き下ろされた「日本の生きた歴史(17)」が掲載されており、近年の古田先生の研究動向の一端に触れることができます。その最後を古田先生は次の一文で締めくくられています。

 わたしは、本居宣長の「孫弟子」です。なぜなら、東北大学で学んだときの恩師、村岡典嗣先生は「本居宣長」研究を学問の出発点とされた方です。(略)中でも、「本居さんはね、いつも『師の説に、な、なづみそ。』と言っています。これが学問です。“わたしの説に拘泥する な。”ということですね。」
 この言葉は、十八歳のわたしの耳と魂に沁みこみ、その後のわたしの一生の学問研究をリードしてくれました。そして今、八十六歳の現在に至っているのです。
 この運命の一稿によって、わたしはこれを本居さんの眼前に呈することができた。それを深く誇りといたします。(引用終わり)

 「『師の説に、な、なづみそ。』本居宣長のこの言葉は学問の真髄です。」と、わたしは三十代の若き日に、古田先生から繰り返し繰り返し聞かされてきました。わたしもこの言葉を生涯の学問研究の指針として、大切にしていきたいと思います。


第534話 2013/03/09

「古田史学」研究サイト@なんば.opu

 第532話で正木裕さんから紹介されましたように、大阪府立大学なんばキャンパス(I-site なんば)3階ライブラリー内に開設された「古田史学」コーナーに書籍を持ち込みました。本日の「植本祭」には様々なグループが参加し、参加者が持ち寄った本が書棚に並べられました。
   それに先だって今朝、竹村順弘さんの車で古田先生宅に行き、著書や貴重な蔵書を100冊ほど寄贈していただき、「植本祭」に持ち込みました。参加された
会員の皆様にも蔵書を持ち寄っていただき、割り当てられていた書棚が初日で満杯となりました。そのため、さらに書棚の割り当てを増やしていただくようお願
いしています。引き続き、古田史学関連書籍の寄贈を続けたいと思いますので、皆様のご協力をお願い申しあげます。
    「古田史学」コーナーがある3階ライブラリーの正式オープンは4月1日からで、利用者は登録が必要です。2階には会議室等があり、関西例会などにも使用できそうです。近くには地下鉄御堂筋線の大国町駅がありますので、交通の便も良好です。
   本日のグループセッションでは正木さんから「邪馬壱国の人口について」というテーマで発表がありました。竹村さんからは「古田史学史跡ガイド」の試案が報告されました。
   蔵書一覧は後日、ホームページに掲載予定です。「古田史学」コーナーが「古田史学」研究サイトとして、多くの人にご利用いただきたいと願っています。


第455話 2012/08/12

「史蹟百選・九州篇」の検討

 突然の豪雨や雷で、JR環状線などが止まる中、昨日、関西例会が行われました。
 竹村さんからは、ミネルヴァ書房より発行予定の「古田史学による史蹟ガイド・九州編」(仮称)の企画案が報告されました。おかげで、同ガイドのイメージ
が一層明確になりました。もちろん、単なる「観光ガイド」ではなく、読んだ人が行きたくなり、古田史学・多元史観の勉強も同時にできるという、そんな切り
口の遺跡ガイドになればと思っています。まずは、役員で手分けして古田史学にとって重要な九州の100箇所をピックアップしていきます。ご期待ください。
 8月例会の報告テーマは次の通りでした。

〔8月度関西例会の内容〕
1). 日本書紀の「難波」(豊中市・木村賢司)
2). 「□妻倭国所布評大野里」木簡(向日市・西村秀己)
3). 古田武彦著作で綴る史蹟百選・九州篇(木津川市・竹村順弘)
4). 太宰府「戸籍」木簡と大宝二年「嶋郡川辺里戸籍」(京都市・古賀達也)
5). 高砂と筑紫の「神松」「山ほめ祭」(川西市・正木裕)
6). 「皮留久佐乃皮斯米之刀斯(はるくさのはじめのとし)」木簡の「春草」とは(川西市・正木裕)
7). 杜甫の「鬼」(豊中市・木村賢司)
○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
 古田先生近況・ミネルヴァ『壬申大乱』出版・『大日本古文書』「大宝二年嶋郡川辺里戸籍」の確認・会務報告・後藤聡一『邪馬台国・近江説』を読む・その他


第433話 2012/07/03

『「九州王朝」の研究』(仮称)の出版企画

先日、ミネルヴァ書房の田引さんとお会いし、新たな書籍出版の企画について話し合いました。田引さんからは、古田史学に基づいた各地の遺跡や遺 物・博物館などの「歴史散歩」ガイドブックを古田史学の会で編集してほしいとの御提案をいただきました。もちろん大賛成ですので、古田史学の会の役員会に はかることをお約束しました。
田引さんとの打ち合わせの結果、まずは「九州編」から始めることになりそうです。来年秋には脱稿して欲しいとのことですので、編集チーム作りと現地会員 への協力要請を行い、取り上げるスポットの選考を行うことになるでしょう。「九州編」が成功したら、次は「近畿編」「東海編」「関東編」「東北・北海道 編」「中国・四国編」などへと発展できれば素晴らしいと思います。従来から、古田史学による遺跡の紹介・解説をした書籍発行への要望が大きかったので、是 非、実現できればと思います。
わたしからは、昨年末発行していただいた『「九州年号」の研究』の姉妹編として、『「九州王朝」の研究』(仮称)の発行を提案しました。前著は「九州年 号」という切り口で九州王朝の実像に迫りましたが、『「九州王朝」の研究』では、多面的な視点から九州王朝の全体像に迫りたいと考えています。具体的に は、この20年間での九州王朝研究における優れた論文を採録し、九州王朝史年表や新たに発表される最新の論稿も掲載したいと考えています。
完成まで数年かかると思いますが、皆さんのご協力をお願いします。


第18話 2005/08/06

『有明海異変』読後感

 第17話にてお名前を紹介した古川清久さんには『有明海異変』(不知火書房)という素晴らしい著書があります。本年一月、古川さんより贈っていただいたこの本を、一気に読み終えた記憶があります。諫早湾の干拓による環境破壊やダムの問題点などを冷静な筆致と徹底したフィールドワークに基づいて書かれた同書を読んで、わたしはその方法に古田史学と共通するものを感じたのでした。しかも、筆者の暖かい人間性や自然を愛する息吹を感じることのできる本だったのです。
 いわゆる社会運動家の書いた本には、過度な感情論に終始するものや、独りよがりの「正義」感(イデオロギー)で思考停止したものも少なくありませんが、古川さんの著作はそれらとは全く異なったものでした。中でも、ダムに反対しつつも、ある優美なダムの姿(白水ダム・大分県)を写真入りで紹介し讃美する箇所を読んで、古川さんの健全な美意識に深く共感しました。更にダムを壊す公共事業の提言など、現実性を伴った解決策を述べるところも秀逸です。
 わたしはこの本を通じて古川さんの人となりを知り、お付き合いを始めました。とは言っても、電話とメイルのやりとりだけで、お会いしたことはまだありません。古川さんは古田史学に共感して、わたしに著書を贈ってくださったようですが、わたしは古田史学を通じて知己を得たのでした。このように古代史にとどまらず現代史まで勉強できるのは、有り難いことです。
 なお、古川さんの論文(歴史関連もあり)はホームページ「有明海・諫早湾干拓リポート1・有明海・諫早湾干拓リポート 2」に掲載されています。