関西例会一覧

第2453話 2021/05/08

緊急告知 5月度「関西例会」会場を変更します

 大阪府の非常事態宣言が延長され、5月15日(土)に予定していた「古田史学の会」関西例会々場(ドーンセンター)の使用ができなくなりました。そこで、急遽、会場を奈良新聞本社ビルに変更することにしました。関西例会としては初めて使用する会場で、ご迷惑をおかけしますが、ご理解の程、お願い申し上げます。

 なお、6月19日(土)に福島区民センターで開催予定の「古田史学の会」会員総会、古代史講演会(共催)、午前中の関西例会については実施する方針ですが、緊急事態宣言の動向によっては変更・中止する可能性があります。ホームページなどでご確認いただきますよう、重ねてお願い申し上げます。

【五月度関西例会の会場】
日時 5月15(土) 10:00~17:00
会場 奈良新聞本社ビル3階セミナールーム (奈良市法華寺町2-4)
   最寄り駅:近鉄奈良線・新大宮駅 駅から北方向へ徒歩11分。
参加費 1,000円 「三密」回避による、大会場使用のため。

※主催は「古田史学の会」です。ご迷惑をおかけしますので、奈良新聞社様へのお問い合わせはご遠慮下さい。


第2437話 2021/04/17

進展する7世紀の九州王朝研究

 本日、ドーンセンターにて「古田史学の会」関西例会が開催されました。5月もドーンセンター(参加費1,000円)開催です。今回はZoomシステムによるリモートテストとして、西村秀己さん(司会担当・高松市)、杉本三郎さん(古田史学の会・会計監査、伊丹市)、松中祐二さん(九州古代史の会・北九州市)、萩野秀公さん(古田史学の会・会員、東大阪市)が参加されました。「古田史学の会」会員でもある松中さんは二十年来の友人で、「古田史学の会」と「九州古代史の会」との交流開始にあたっては両会の橋渡し役をしていただきました。お昼休みの役員会もリモートで実施しました。
 今回の発表はいずれも7世紀の九州王朝を対象としたもので、ハイレベルで新たな視点があり、『日本書紀』や『万葉集』を読み込んでいなければ深く理解できないようなテーマでした。特に刺激を受けたのが、服部さんと正木さんの研究でした。服部さんは、九州王朝(倭国)が受容した仏典(法華経、無量寿経)の差異に着目され、十七条憲法は女性の推古よりも、男性の多利思北孤が公布したとする方が妥当と説明されました。このような着眼点は今までにはなかったもので、新鮮でした。
 正木さんは、『日本書紀』に見える持統の伊勢行幸記事(692年)は、その34年前の九州王朝の伊勢王による糸島半島「伊勢」行幸と蝦夷国への軍事行動記事が改変転記されたものとする仮説を発表されました。持統6年の伊勢行幸記事は矛盾や誇張が大きく、言われてみればおかしな内容でした。正木説はそれらを解決できる一つの仮説と思われました。

 なお、発表者はレジュメを30部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔4月度関西例会の内容〕
①日本書紀の前から作られた太子伝説 (大山崎町・大原重雄)
②仏教と聖徳太子 ―法華経と無量寿経― (八尾市・服部静尚)
③蘇我氏の時代の近畿に関する考察 (茨木市・満田正賢)
④柿本人麻呂「近江荒都歌」の解釈について (たつの市・日野智貴)
⑤「伊勢王」の呼称と糸島なる伊勢 (川西市・正木 裕)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費1,000円(「三密」回避に大部屋使用の場合)
05/15(土) 10:00~17:00 会場:ドーンセンター
06/19(土) 10:00~12:00 会場:福島区民センター
      ※午後は古代史講演会と会員総会を開催します。

◎古代史講演会 参加費:無料
 共催:古代大和史研究会、誰も知らなかった古代史の会、市民古代史の会・東大阪、市民古代史の会・京都、和泉史談会、古田史学の会
06/19(土) 13:00~16:00 会場:福島区民センター
「考古学から見た邪馬台国 ―畿内ではありえぬ邪馬台国―」 講師:関川尚功さん
 「考古学から見た邪馬壹国 ―博多湾岸説―(仮題)」 講師:正木 裕さん
 ※講演会終了後に「古田史学の会」会員総会を開催します。会員の皆さんのご参加をお願いします。

《関西各講演会・研究会のご案内》
 ※コロナ対応のため、緊急変更もあります。最新の情報をご確認下さい。

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 「古代大和史研究会」特別講演会のご案内
◇日時 2021/04/24(土) 13:00~17:00
◇会場 奈良新聞本社西館3階
◇参加費 500円
◇テーマ 卑弥呼と邪馬壹国『「邪馬台国」はなかった』出版50周年記念講演会
◇講師・演題(予定)
 古賀達也(古田史学の会・代表) 九州王朝官道の終着点 ―筑紫の都(7世紀)から奈良の都(8世紀)へ―
 大原重雄(『古代に真実を求めて』編集部) メガーズ説と縄文土器
 満田正賢(古田史学の会・会員) 欽明紀の真実
 服部静尚(『古代に真実を求めて』編集長) 日本書紀の述作者は中国人ではなかった
 正木 裕(古田史学の会・事務局長、大阪府立大学講師) 多賀城碑の解釈~蝦夷は間宮海峡を知っていた

 04/27(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館 交流ホールBC室
 「伊勢王」 講師:正木 裕さん(大阪府立大学講師)
 05/17(月) 13:00~17:00 会場:壽光寺コンサートホール
 「聖徳太子と仏教」 講師:服部静尚さん(『古代に真実を求めて』編集長)
 「能楽の淵源と筑紫の舞楽」 講師:正木 裕さん(大阪府立大学講師)
 05/25(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館 交流ホールBC室
 「伊勢王③」 講師:正木 裕さん(大阪府立大学講師)

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 05/21(金) 18:30~20:00 「『神武東征説話』の再検討② 盗まれ地降臨神話」 講師:正木 裕さん

◆「市民古代史の会・東大阪」講演会 会場:東大阪市 布施駅前市民プラザ(5F多目的ホール) 資料代500円
 05/08(土) 14:00~16:30 「天孫降臨と神武東征 ―神話と歴史―」 講師:服部静尚さん

◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 04/29(火) 13:00~16:00開催中止
開催中止 「聖徳太子と仏教」 講師:服部静尚さん
開催中止「九州王朝官道の終着点」 講師:古賀達也

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター(中集会室)
 《未定》


第2415話 2021/03/20

関西例会、リモート司会が定着

 本日、福島区民センターにて「古田史学の会」関西例会が開催されました。次回はドーンセンター(参加費1,000円)で開催します。
 今回もZoomシステムによるハイブリット型(会場参加+リモート参加)例会のテストを実施しました。会場ごとにWi-Fi環境が異なりますので、久冨直子さん(『古代に真実を求めて』編集部)が機材や設定の調整をされています。システム的にはほぼ完成の域に近づいてきました。
 司会担当の西村秀己さん(古田史学の会・全国世話人、高松市)は今回もリモートで司会をされました。当人はいないのに会場には西村さんの声が響き渡るという不思議な光景ではありました。今月は冨川ケイ子さん(古田史学の会・全国世話人、相模原市)と別役政光さん(古田史学の会・会員、高知市)がリモートテスト参加されました。今後、更に遠隔地の会員にご協力いただく予定です。
 今回は久しぶりにわたしも発表させていただきました。近畿天皇家はいつから「天皇」を名乗ったのかというテーマで、七世紀初頭からナンバーツーとして「天皇」を称していたとする古田旧説と、文武から始めて「天皇」を称したとする古田新説に関して、古田旧説が妥当とする根拠として、金石文や木簡について説明しました。
 古田新説を支持される服部さんとの論争を中心に、30分の発表の後、40分ほどの質疑応答が続きました。合意には至りませんでしたが、服部さんの見解やその前提となる歴史認識については理解が進みました。また、七世紀の第4四半期頃(「天武」期)からは大和飛鳥がある時期まで政治的中心地であり、権力者がいたとすることについてはほぼ合意できたように思われました。その〝権力主体〟が誰(何)であったのかについては見解が分かれましたので、次の機会まで更に研究を深めたいと思います。
 正木さんからは、七世紀における九州王朝の歴代天子の系列(多利思北孤→利歌彌多弗利→伊勢王=中皇命)についての解説がなされました。よく整理された発表であり、「九州王朝通史」刊行に向けての準備とも言える内容でした。その中で紹介された、利歌彌多弗利から善光寺如来への書簡と考えられてきた「命長七年文書」について、利歌彌多弗利の妻(勝鬘)から善光寺如来への「願文」ではないかというアイデアが浮かび、ご披露しましたが、帰宅後、念のため確認したところ、このアイデアには阿部周一さん(古田史学の会・会員、札幌市)による先行説がありましたので取り下げます。失礼いたしました。
 なお、発表者はレジュメを30部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔3月度関西例会の内容〕
①刷り込まれる歴史観 ―一元論と一国文化自生論の要因― (大山崎町・大原重雄)
②『蘇我王国論』批判(2) (茨木市・満田正賢)
③「捕鳥部萬」は「穴穂部皇子」である (たつの市・日野智貴)
④関川尚功『考古学から見た邪馬台国大和説』の紹介 (川西市・正木 裕)
⑤七世紀「天皇」金石文と『日本書紀』の対応 (京都市・古賀達也)
⑥何故「俀国」なのか (京都市・岡下英男)
⑦乱れる斉明紀、普通の皇極紀 (八尾市・服部静尚)
⑧九州王朝の天子の系列 多利思北孤・利歌彌多弗利から、唐と礼を争った王子・伊勢王へ (川西市・正木 裕)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費1,000円(「三密」回避に大部屋使用の場合)
04/17(土) 10:00~17:00 会場:ドーンセンター

《関西各講演会・研究会のご案内》
◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 「古代大和史研究会」特別講演会のご案内
◇日時 2021/04/24(土) 13:00~17:00
◇会場 奈良新聞本社西館3階
◇参加費 500円
◇テーマ 卑弥呼と邪馬壹国『「邪馬台国」はなかった』出版50周年記念講演会
◇講師・演題(予定)
 古賀達也(古田史学の会・代表) 九州王朝官道の終着点 ―筑紫の都(7世紀)から奈良の都(8世紀)へ―
 大原重雄(『古代に真実を求めて』編集部) メガーズ説と縄文土器
 満田正賢(古田史学の会・会員) 欽明紀の真実
 服部静尚(『古代に真実を求めて』編集長) 日本書紀の述作者は中国人ではなかった
 正木 裕(古田史学の会・事務局長、大阪府立大学講師) 多賀城碑の解釈~蝦夷は間宮海峡を知っていた

 04/27(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館 交流ホールBC室
 「伊勢王」 講師:正木 裕さん(大阪府立大学講師)

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 05/21(金) 18:30~20:00 「『神武』は鳴門海峡を渡った ―『神武東征説話』の再検討」 講師:正木 裕さん

◆「市民古代史の会・東大阪」講演会 会場:東大阪市 布施駅前市民プラザ(5F多目的ホール) 資料代500円
 04/10(土) 14:00~16:30 「九州王朝とは ―邪馬台国論争が生じた理由」 講師:服部静尚さん
 05/08(土) 14:00~16:30 「天孫降臨と神武東征 ―邪馬台国論争が生じた理由」 講師:服部静尚さん

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター(中集会室)
 04/13(火) 14:00~16:00 「周王朝から邪馬壹国そして現代へ」 講師:正木 裕さん

◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 04/20(火) 18:30~20:00 「聖徳太子と仏教」 講師:服部静尚さん


第2387話 2021/02/21

多賀城碑「道標」説を正木さんが発表

 昨日、ドーンセンターにて「古田史学の会」関西例会が開催されました。次回は福島区民センター(参加費500円)で開催します。
 今回もZoomシステムによるハイブリット型(会場参加+リモート参加)例会のテストを実施しました。例会司会担当の西村秀己さん(古田史学の会・全国世話人、高松市)と別役政光さん(古田史学の会・会員、高知市)が、午後からは冨川ケイ子さん(古田史学の会・全国世話人、相模原市)がテスト参加されました。当初、ハウリングトラブルなどが発生したものの、担当者のご尽力により解決をみました。

 今回の発表はいずれも勉強になり、刺激を受けました。満田さんからは古田史学の会・元副代表の山崎仁礼男さんの著書『蘇我王国論』に対する批評と解説がなされ、同書は古田学派内で取り上げてこられなかったようだが、自説とは異なるものの貴重な論点や指摘があり、無視すべきではないとされました。わたしにとっても懐かしい書籍であり、改めて読みたくなりました。
 考古学に造詣が深い大原さんからは、DNA解析という最新科学の成果により人類の移動などが判明し、従来説が大きく変わろうとしてることが発表されました。特に現生人類とネアンデルタールの〝交雑〟や、〝古代北ユーラシア人〟のアメリカ大陸への移動が明らかなったことなど、始めて聞くことばかりでした。
 日野さんからは、「椿井文書」(江戸期成立)と呼ばれるものがあるが、椿井文書とは断言できるだけの根拠の無い二つの史料が、十分な学問的検証がないまま偽書扱いされていることについて報告がありました。これも始めて聞くテーマでした。
 服部さんからは、『日本書紀』に見える禅譲や禅位・受禅の語を九州王朝説の視点でとらえるという新テーマが報告されました。それと、近年の関西例会でも検討や論争が続いている七世紀後半の王朝交代へ至る諸仮説が発表されました。壬申の乱から文武の天皇即位までの歴史過程を一連の流れとして説明し、要所要所を作業仮説(天武=筑紫都督倭王説、中宮天皇=九州王朝女帝説、九州王朝から文武への禅譲説など)で繫いでいくという発表方法をとられ、服部説の全容を理解することに役立ちました。他方、検証・討議すべき点も多岐にわたるため、論点整理を進めるような質疑の必要を感じました。
 正木さんからは、わたしが「洛中洛外日記」で展開している多賀城碑の読解や蝦夷国問題に関わる新説が発表されました。その要点は、碑文の「西」の字は、多賀城から一旦西へ向かうという意味であり、その先にある官道を南西・北東へ進んだ各里程が記されているとされました。すなわち、多賀城碑の性格を「道標」とされたわけです(「西」を多賀城から出発する方向とする「道しるべ読法」説)。
 その結果、碑文の常陸国界や下野国界への里数が妥当な距離になり、北へ向かうと蝦夷国界へ至り、碑文の距離(120里=約60km)の地点には多賀城(Ⅰ期)と同時期に建造された官衙や柵が出土しており、当時の多賀城は大和朝廷の安定した支配領域内と考えざるを得ず、古田先生の〝多賀城蝦夷国内〟説は成立困難であるとされました。
 この正木説の優れている点は、「西」の字の意味づけができることと、柵や官衙などの考古学的出土事実が、多賀城の北約60km付近に蝦夷国界があるという碑文に対応していることなどです。また、「靺鞨國界三千里」(約1600km)がアムール川河口に相当することも指摘されました(その川を遡上すると同国の都、黒水都督府に至る)。
 正木さんによる新説は古田説やわたしの見解とは異なりますが、仮説として成立しています。これからの研究にあたり、有力説の一つとして留意したいと思います。

 なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔2月度関西例会の内容〕
①『蘇我王国論』批判(1)(茨木市・満田正賢)
②新大陸に渡った共通の祖先(大山崎町・大原重雄)
③世継神社と百済王神社の縁起造作説への疑問(たつの市・日野智貴)
④禅位・禅譲・受禅についての考察(八尾市・服部静尚)
⑤王朝交代の真実(八尾市・服部静尚)
⑥『真実の東北王朝』と多賀城碑の解釈について(川西市・正木 裕)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費1,000円(「三密」回避に大部屋使用の場合)
03/20(土) 10:00~17:00 会場:福島区民センター(※参加費500円)

《関西各講演会・研究会のご案内》
◆「古代大和史研究会」特別講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 02/23(火) 10:00~12:00 会場:奈良新聞本社西館3階
 「多利思北孤の時代」 講師:正木 裕さん(大阪府立大学講師)

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 03/09(火) 18:30~20:00 「『神武』は鳴門海峡を渡った ―『神武東征説話』の再検討」 講師:正木 裕さん

◆「古代史講演会in八尾」 会場:八尾市文化会館プリズムホール 参加費500円
 03/13(土) 14:00~16:30 「我が国にあった王朝交代」 講師:服部静尚さん

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター(中集会室)
 3月講演〔中止〕
 04/13(火) 14:00~16:00 「周王朝から邪馬壹国そして現代へ」 講師:正木 裕さん

◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 3月講演〔未定〕


第2351話 2021/01/16

仏法僧の受戒・得度制度の多元史観

 本日、i-siteなんば(大阪府立大学なんばサテライト 2F)にて「古田史学の会」関西例会が開催されました。次回はドーンセンターで開催します。今回の例会でも、Zoomシステムによるハイブリッド型(会場参加+リモート参加)例会のテストを実施しました。リモート配信システムが完成しつつありますので、関西例会リモート参加費・同規定(参加資格)などの運用面と必要経費負担(イニシャルコスト・ランニングコスト)について検討・調整を進めています。
 今回の三つの研究報告はいずれも新たな分野・視点を含むもので、優れた発表でした。その中でも日野さんによる、古代日本における仏教政策や仏教教団の実態に迫り、九州王朝の仏教政策(戒壇)の調査分析する試みは先駆的でした。他方、大和朝廷の僧侶の授戒・得度政策に矛盾(私度僧はいやだが、鑑真和上渡来以前は「自誓受戒」が行われていた)があることを指摘され、それが九州王朝仏教政策を否定するための〝苦肉の策〟とする仮説は示唆的でした。この分野の研究は古田学派としては初めてではないでしょうか。研究の進展と論文発表が待たれます。
 午後からは令和三年新春古代史講演会があるため、発表は午前中だけとなりました。なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔1月度関西例会の内容〕
①九州王朝の戒壇と僧伽(サンガ)(たつの市・日野智貴)
②縄文一万年のマラソンランナーの実相(大山崎町・大原重雄)
③野中寺彌勒菩薩像銘と女帝(八尾市・服部静尚)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費1,000円(「三密」回避に大部屋使用の場合)
02/20(土) 10:00~17:00 会場:ドーンセンター
03/20(土) 10:00~17:00 会場:福島区民センター(※参加費500円)

《関西各講演会・研究会のご案内》
◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 2月講演〔中止〕

◆「古代大和史研究会」特別講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 02/03(水) 13:00~17:00 会場:松慶山 浄照寺(近鉄田原本町駅東口から徒歩2分)
《第一部》「能楽の中の古代史」(1)
  謡曲「羽衣」に秘められた古代史 講師:正木 裕さん(大阪府立大学講師)
《第二部》聖徳太子と金光明経 講師:服部静尚さん(『盗まれた「聖徳太子」伝承』『倭国古伝』編集長)

 02/23(火) 10:00~12:00 会場:奈良新聞本社西館3階
 「多利思北孤の時代」 講師:正木 裕さん(大阪府立大学講師)

◆「古代史講演会in八尾」 会場:八尾市文化会館プリズムホール 参加費500円
 03/13(土) 14:00~16:30 「天皇と三種の神器」「王朝交代」 講師:服部静尚さん

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター(中集会室)
 2月講演〔中止〕

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 02/02(火) 18:30~20:00 「聖徳太子の実像 ―1400回忌を迎えて」 講師:正木 裕さん


第2340話 2021/01/05

1月16日(土) 新春古代史講演会のご案内済み

 既にお知らせしていますように、来る1月16日(土)に新春古代史講演会を開催します。本年は、古田武彦著『「邪馬台国」はなかった』発刊から50周年を記念して、同書によせた講演三題をお届けします。古田先生が提唱された邪馬壹国説における最新研究を「古田史学の会」の研究者3名が発表します。

 わたしからは、倭人伝に記された倭国の二倍年暦が古代戸籍(大宝二年籍)にまで影響が及んでいることを報告させていただきます。正木裕さん(古田史学の会・事務局長、大阪府立大学講師)からは、邪馬壹国博多湾岸説を証明する最新の考古学的成果などが紹介されます。谷本茂さん(古田史学の会・会員)からは、「古田史学の会」関西例会でも注目され論争にもなった投馬国・狗奴国に関する新説が発表されます。
 昨年から続くコロナ禍の中での講演会ですが、広い会場を使用して三密を回避し、手指の消毒・マスク着用の要請などの対策をとります。お誘い合わせの上、ご参加いただきますようお願い申し上げます。なお、コロナの影響により緊急中止の恐れもありますので、ホームページにご注意いただきますようお願い申し上げます。

 古田史学の会 令和三年新春古代史講演会
 ~『「邪馬台国」はなかった』発刊50周年によせて~

□日時 1月16日(土) 13:30~17:00 (開場13時)

□会場 I-site なんば 大阪府立大学なんばサテライト
〔アクセス〕
○地下鉄大国町駅(御堂筋線・四つ橋線)1号出口より東約450m 徒歩7分
○南海電鉄難波駅なんばパークス方面出口より南約800m 徒歩12分
○地下鉄なんば駅(御堂筋線)5号出口より南約1,000m 徒歩15分

□参加費(資料代) 千円 ※午前中の「古田史学の会」関西例会にも参加できます。

□主催:古田史学の会 協力:古代大和史研究会 誰も知らなかった古代史の会 和泉史談会 市民古代史の会・京都 市民古代史の会・八尾

□講師と演題
 谷本 茂 「道行読法」と投馬国・狗奴国の位置
 正木 裕 改めて確認された「博多湾岸邪馬壹国説」
 古賀達也 古代戸籍に見える二倍年暦の痕跡


第2327話 2020/12/19

ハイブリット型リモート例会のテスト実施

 本日、ドーンセンターにて「古田史学の会」関西例会が開催されました。次回は01/16(土)に関西例会(午前)と新春古代史講演会(午後)をi-siteなんば(大阪府立大学なんばサテライト 2F)で開催します。参加費は終日でも1,000円です。ふるってご参加下さい。広めの会場を確保し、コロナ対策は従来通り実施します。

 今回の例会では、久冨直子さん(『古代に真実を求めて』編集部)の企画立案に基づき、多くの機材を会場に持ち込んで、Zoomシステムによるハイブリット型(会場参加+リモート参加)例会のテストを実施しました。持ち込んだ主な機材は、パソコン4台・撮影用カメラ3台・高性能集音マイク2基・Zoom画面映写用プロジェクター・レジュメPDF化用スキャナー・端末切り替えスイッチャーなどで、10時からの例会に間に合うよう、早朝から機材を搬入しました。このシステム選定にあたっては、11月に開催された八王子セミナー(古田武彦記念古代史セミナー2020)のハイブリッド型システムを参考にさせていただきました。
 ハウリングなど若干の音響トラブルが発生しましたが、全般的には好調な滑り出しでした。機器・システムの運転管理をしていただいた竹村順弘さん(古田史学の会・事務局次長)と久冨さん、関東からリモートテストに参加された冨川ケイ子さん(古田史学の会・全国世話人)をはじめ、会場でのリモート参加テストをしていただいた茂山憲史さん(『古代に真実を求めて』編集部)他、ご協力頂いた皆さん、ならびに機材を持ち寄っていただいた方々に御礼申し上げます。
 今回得た知見に基づき、引き続きテストを実施する予定です。ハード面での安定したシステム構築ができましたら、関西例会リモート参加費・同規定などの運用面の検討を行います。必要経費(ランニングコスト)については、関西例会参加者からの参加費により賄えるとのことです。いよいよ、わたしたち「古田史学の会」も新たなステージに立つ時代を迎えました。全国の会員の皆様のご支援をお願い申し上げます。

 今回の例会発表は次の通りでした。なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔12月度関西例会の内容〕
①十二年後差説による九州王朝系近江朝(たつの市・日野智貴)
②倭姫王と額田王(茨木市・満田正賢)
③大陸棚地の移住民(大山崎町・大原重雄)
④大化年号の検討 野中寺彌勒菩薩像を見て(八尾市・服部静尚)
⑤飛鳥から国が始まったのか(八尾市・服部静尚)
⑥トカラ記事と「驛」記事(東大阪市・萩野秀公)
⑦「鬼滅の刃」と九州王朝(京都市・古賀達也)
⑧法隆寺金堂「薬師如来坐像」は利歌彌多弗利の為に造立された(川西市・正木 裕)

◎事務局長報告(正木事務局長)
関西各地の講演会の案内

◆「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費1,000円(「三密」回避に大部屋使用のため)
 01/16(土) 10:00~12:00 会場:i-siteなんば ※午後は新春古代史講演会
02/20(土) 10:00~17:00 会場:福島区民センター(※参加費500円)

◆新春古代史講演会 2021年1月16日(土) 13:30~17:00 (受付開始13:00) 会場:i-siteなんば(大阪府立大学なんばキャンパス) 参加費1,000円 ※午前は関西例会。午前・午後通しの参加費も1,000円です。
 ①「道行き読法」と投馬国・狗奴国の位置〈仮題〉
  講師:谷本 茂さん(古田史学の会・会員)
 ②裏付けられた「邪馬壹国の中心は博多湾岸」〈仮題〉
  講師:正木 裕さん(古田史学の会・事務局長、大阪府立大学講師)
 ③古代戸籍に遺された二倍年暦の痕跡 ―『大宝二年籍』『延喜二年籍』の史料批判―〈仮題〉
  講師:古賀達也(古田史学の会・代表)

《各講演会・研究会のご案内》
◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 12/22(火) 18:30~20:00 「古代戸籍に記された超・長寿社会の謎 ―『大宝二年籍』『延喜二年籍』の真相―」 講師:古賀達也

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 12/22(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館交流ホールBC室
    「多利思北孤の時代⑤」 講師:正木 裕さん

◆「古代史講演会in八尾」 会場:八尾市文化会館プリズムホール 参加費500円
 01/09(土) 14:00~16:30 「白村江での敗戦と唐からやってきた進駐軍」「筑紫都督府と壬申の乱」 講師:服部静尚さん
 03/13(土) 14:00~16:30 「天皇と三種の神器」「王朝交代」 講師:服部静尚さん

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター(中集会室)
 01/12(火) 14:00~16:00 「河内・和泉の大王と丁未の乱」 講師:正木 裕さん

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 02/02(火) 18:30~20:00 「未定」


第2319話 2020/12/13

リモート会議のテスト

 昨晩、Zoomシステムを使用して、「古田史学の会」の役員・編集部員有志によるリモート会議のテストを実施しました。久冨直子さん(『古代に真実を求めて』編集部)のご提案と準備によるもので、「古田史学の会」としては初めての試みでしたが、大きなトラブルもなく、わりとスムーズに行えました。わたしは仕事でTeamsを使ったことはあるのですが、Zoomは初めてで若干不安でしたが、画像が左右反転していたことを除けば、画質も音質も問題ありませんでした。
 このシステムは「古田史学の会」役員会や四役会議にも使えそうです。今まで、「古田史学の会」の運営や意思決定のために、役員会は関西例会の会場でお昼休みに開催していました(例会に参加されている一般の会員もおられる中でのオープンな会議です)。コロナ禍のため、関西例会が開けなくなったときは、役員会も開催できず困っていましたが、これからはリモート会議で緊急時の対応ができそうです。
 わたしはZoomにまだ不慣れですので、皆さんに教えていただきながら参加します。将来的には古田史学の発信などにも使用できればと期待しています。準備にご尽力いただいた久冨さんや正木事務局長、横田さん(インターネット事務局)、テストにご参加いただいた方々に御礼申し上げます。


第2302話 2020/11/22

『日本書紀』の「称制」記事を疑う

 昨日、福島区民センターにて「古田史学の会」関西例会が開催されました。次回12/19(土)はドーンセンターで開催します。
 今回の研究発表で最も興味深かったのが服部さんの『日本書紀』に見える「称制」の研究でした。『日本書紀』には神功と天智、持統による称制記事がありますが、中国史書に見える「称制」とは、まだ幼い天子の代理として母親(皇太后)などが政治を行うことを意味しています。他方、『日本書紀』では、天智や持統は前の天皇(斉明、天武)が亡くなってから「称制」しており、本来の意味での「称制」ではないことを疑問視され、持統は九州王朝の天子との関係における「称制」であったことを『日本書紀』は隠したとされました。「称制」の定義などについて反対意見も出されましたが、服部説はするどい着眼点であり、『古田史学会報』での発表が待たれます。
 例会後の懇親会では、関西例会をズームやスカイプにより配信することについて、意見交換がなされました。こちらも、実施に向けて検討を続けます。
 今回の例会発表は次の通りでした。なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔11月度関西例会の内容〕
①海女の玉取伝説(高松市・西村秀己)
②古事記・日本書紀の編纂に関する一考察(茨木市・満田正賢)
③元号の始まり(八尾市・服部静尚)
④称制とは何か(八尾市・服部静尚)
⑤昔話の主役の老人の意味と古代の家族構成について(大山崎町・大原重雄)
⑥書紀に探る蘇我氏東漸の痕跡(大阪市・西井健一郎)
⑦九州王朝の国号(京都市・岡下英男)
⑧『古事記』に見える「驛」記事(東大阪市・萩野秀公)
⑨『隋書』と俀国・多利思北孤・端政(川西市・正木 裕)

◎事務局長報告(正木事務局長)
(1)例会初参加者(2名)の自己紹介
(2)新入会員の報告
(3)八王子セミナー(古田武彦記念古代史セミナー2020)の報告(古賀・久冨さん)
(4)関西各地の講演会の報告と紹介
(5)南秀雄「古墳時代における都市化の実証的研究」(大阪市文化財協会のweb版紹介)
(6)福岡県古賀市船原古墳出土「玉虫入り馬具」、京都府与謝野町大風呂南1号墳出土「ガラス釧(くしろ)」報道の紹介
(7)五尺刀と糸島の宇陀(宇田川原)の紹介

◆「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費1,000円(「三密」回避に大部屋使用のため)
 12/19(土) 10:00~17:00 会場:ドーンセンター
 01/16(土) 10:00~12:00 会場:i-siteなんば ※午後は新春古代史講演会
02/20(土) 10:00~17:00 会場:福島区民センター(※参加費500円)

◆新春古代史講演会 2021年1月16日(土) 13:30~17:00 (受付開始13:00) 会場:i-siteなんば(大阪府立大学なんばキャンパス) 参加費1,000円 ※午前は関西例会。午前・午後通しの参加費も1,000円です。
 ①「道行き読法」と投馬国・狗奴国の位置〈仮題〉
  講師:谷本 茂さん(古田史学の会・会員)
 ②裏付けられた「邪馬壹国の中心は博多湾岸」〈仮題〉
  講師:正木 裕さん(古田史学の会・事務局長、大阪府立大学講師)
 ③古代戸籍に遺された二倍年暦の痕跡 ―『大宝二年籍』『延喜二年籍』の史料批判―〈仮題〉
  講師:古賀達也(古田史学の会・代表)

《各講演会・研究会のご案内》
◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 12/22(火) 18:30~20:00 「古代戸籍に記された超・長寿社会の謎 ―『大宝二年籍』『延喜二年籍』の真相―」 講師:古賀達也

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 12/22(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館交流ホールBC室
    「多利思北孤の時代⑤」 講師:正木 裕さん

◆「古代史講演会in八尾」 会場:八尾市文化会館プリズムホール 参加費500円
 01/09(土) 14:00~16:30 「白村江での敗戦と唐からやってきた進駐軍」「筑紫都督府と壬申の乱」 講師:服部静尚さん
 03/13(土) 14:00~16:30 「天皇と三種の神器」「王朝交代」 講師:服部静尚さん

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター
 12/08(火) 14:00~16:00 「未定」 講師:未定

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 12/01(火) 18:30~20:00 「周王朝から邪馬壹国へ ―『倭人伝』の官名『泄謨觚・柄渠觚・兕馬觚』の謎を解く」 講師:正木 裕さん
 02/02(火) 18:30~20:00


第2276話 2020/10/28

2021年新春古代史講演会の予告

 「古田史学の会」役員会は恒例の新春古代史講演会(大阪市)の開催を決定しました。これまでのコロナ自粛から本格的な活動再開へと舵を切りたいと思います。とは言え、行政からの要請による必要な対策は継続します。詳細は後日あらためてお知らせしますが、下記の内容で準備を進めています。
 11月に開催される「古田武彦記念古代史セミナー2020(八王子セミナー)」へ関西から参加予定の3名を講師として、同じテーマを発表していただきます。関東(八王子市)までは遠くて参加しにくい関西の皆様には、同セミナーの発表内容を聞ける良い機会となるのではないでしょうか。多くの皆様のご参加をお願い申し上げます。

《2021年新春古代史講演会の概要》
□日時 1月16日(土)の午後 ※午前中は関西例会を開催します。
□会場 I-siteなんば(大阪府立大学なんばキャンパス)
 ※「定員の半分まで」の使用制限があるため、広い部屋を予約しました。
□参加費 1000円
□講師:講演テーマ ※古田武彦記念古代史セミナー(八王子セミナー)と同テーマ。
 谷本茂さん(古田史学の会・会員):「道行き読法」と投馬国・狗奴国の位置
 正木裕さん(古田史学の会・事務局長、大阪府立大学講師):裏付けられた「邪馬壹国の中心は博多湾岸」
 古賀達也(古田史学の会・代表):古代戸籍に見える二倍年暦の影響―「延喜二年籍」「大宝二年籍」の史料批判―


第2264話 2020/10/17

7世紀末の王朝交替「禅譲」説

 本日、「古田史学の会」関西例会が開催されました。わたしは今月も発表させていただきました。テーマは古代中国における二倍年暦(二倍年齢)についてです。人の寿命を百歳と表記する周代史料群と、その半分の五十歳とする漢代史料群を紹介し、その寿命表記の二倍の差は、先行した周代の二倍年暦に由来すると考えざるを得ないとしました。服部さんや日野さんから厳しい質問や批判をいただきましたので、更なる史料根拠の明示と論証力の高上に努めたいと思います。
 大原さんからは、インドネシアのクラカタウ(クラカトア)火山の噴火の年が文献(『南史』)と火山灰層研究により535年であり、その噴火により地球全体の気候変動をもたらしたこと、火山灰層層位が遺跡の編年に使用できることなどが紹介されました。535年の翌年に九州年号が「僧聴」に改元されており、気象変動による農作物の不作や疫病発生などによる改元かもしれません。以前、「古田史学の会」で記念講演していただいた中塚武先生の酸素同位体比年輪年代法によれば、534年・536年・537年に日本では大干ばつが発生しているとのことで、これもクラカタウ火山の噴火の影響と思われます。
 日野さんからは『日本書紀』に見える三人の「倭姫(媛)」(垂仁天皇の娘、継体天皇の妃、天智天皇の皇后)について、個人名というよりも何らかの「官(役)職名」ではないかとする仮説が発表されました。倭人伝にも「使大倭」という国名の「倭」を用いた役職名が見えることなどを根拠とされました。有力な仮説ではないでしょうか。
 今回の発表で、わたしがもっとも注目していたのが服部さんの「九州王朝天子よりの禅譲で文武天皇は即位した」という仮説でした。先月、わたしが発表した〝王朝統合と交替の新古代史 ―文武・元明「即位の宣命」の史料批判―〟の内容と対応するものでしたので、結論には大賛成ですが、はたして論証できるのだろうかと半信半疑で聞いていました。ところが、『続日本紀』文武元年(697)十二月二八日条の正月拝賀(賀正礼)禁止命令を九州王朝の天子に対する拝賀禁止とされ、その二日後の二年正月一日には文武天皇への拝賀が「大極殿」で実施されたことを根拠に、文武は天皇即位時に九州王朝から禅譲を受けていたとされました。この論証により服部説は成立しており、有力な見解と思われました。
 今回の例会発表は次の通りでした。なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔10月度関西例会の内容〕
①継体・安閑・宣化期の二つの可能性について(茨木市・満田正賢)
②九州王朝天子よりの禅譲で文武天皇は即位した(八尾市・服部静尚)
③大噴火と天岩戸神話と埴輪祭祀(大山崎町・大原重雄)
④トランプ大統領の過ちと聖武天皇の過ち(川西市・正木 裕)
⑤「倭姫」という称号について(たつの市・日野智貴)
⑥消息往来―書簡の読みと所在の考察(京都市・岡下英男)
⑦二倍年暦と「二倍年齢」の歴史学 ―周代の百歳と漢代の五十歳―(京都市・古賀達也)
⑧「博徳書書内の「驛」記事について」の検証の続き(東大阪市・萩野秀公)
⑨深草の屯倉記事について(東大阪市・萩野秀公)

◆「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費1,000円(「三密」の回避に大部屋使用のため)
 11/21(土) 10:00~17:00 会場:福島区民センター(※参加費500円)

《各講演会・研究会のご案内》
◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 10/20(火) 18:30~20:00 「能楽の中の古代史(3)」 老松~飛梅と筑紫の神松伝承~ 講師:正木 裕さん

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 10/27(火) 10:00~12:00 会場:奈良新聞社西館3階
    「多利思北孤の時代③ 「聖徳太子」の「遣隋使」はなかった」 講師:正木 裕さん
 11/17(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館交流ホールBC室
    「多利思北孤の時代④」 講師:正木 裕さん
 12/22(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館交流ホールBC室
    「多利思北孤の時代⑤」 講師:正木 裕さん

◆「古代史講演会in八尾」 会場:八尾市文化会館プリズムホール 参加費500円
 11/03(火・祝) 14:00~16:00 ①「大化の改新」と難波京 ②条坊都市はなぜ造られたのか 講師:服部静尚さん

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター
 11/10(火) 14:00~16:00 「なぜ蛇は神なのか」 講師:大原重雄さん
             「法隆寺薬師像は実は釈迦像だった」 講師:服部静尚さん
 12/08(火) 14:00~16:00 「未定」 講師:未定

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 12/01(火) 18:30~20:00 「周王朝から邪馬壹国へ ―『倭人伝』の官名『泄謨觚・柄渠觚・兕馬觚』の謎を解く」 講師:正木 裕さん

《古田武彦記念古代史セミナー2020》(八王子セミナー)
 11/14~15 大学セミナーハウス(東京都八王子市)
 新型コロナ対策として、Zoomを使ったオンライン+現地参加の「ハイブリッド方式」での開催となりました。オンライン参加6,000円、現地参加15,000円。


第2236話 2020/08/20

明治天皇の即位の宣命と「不改常典」

 先日の「古田史学の会」関西例会では『続日本紀』元明天皇の即位の宣命に初めて見える「不改常典」について研究発表しました。その要旨は、天智の近江朝が九州王朝からその権威を引き継いだ宣言こそ「不改常典」の内実ではないかとするものでした。そしてそれは「禅譲」に近いものではないかと推定しました。
 しかし、『日本書紀』は九州王朝の存在や、天智がその権威を継承したことを隠していますし、宣命で述べられた天智天皇が定めた「不改常典」という言葉さえも掲載していません。ですから、『日本書紀』成立後(720)の聖武天皇や孝謙天皇らの即位宣命にも「不改常典」のことが記されてはいるものの、初代の神武天皇を近畿天皇家の権威の淵源とする『日本書紀』の大義名分と、天智天皇が定めた権威の淵源「不改常典」との関係が不明瞭です。
 ところが、この天智天皇が定めた法(「不改常典」法)と『日本書紀』の大義名分の両方含む即位の宣命があります。それは慶應四年(1868)八月二十七日に発布された明治天皇の即位の宣命です(翌九月に「明治」に改元)。当該部分を紹介します。

 「掛(かけまくも)畏(かしこ)き近江の大津の宮に、御宇(あめのした)しろしめし、天皇の初め賜ひ定め賜へる法の随(まま)に、仕え奉(まつる)と仰せ賜ひ授け賜ひ」
 「橿原の宮に御宇しろしめし、天皇の御(おん)創(はじ)めたまへる業(わざ)の古(いにしへに)基(もとづ)き、大御世を弥(いや)益々に、吉(よ)き御代と固(かため)成(な)し賜はむ」

 このように、近世においても天智天皇と神武天皇の二人が皇室の歴史的権威の淵源とされていることは興味深いことと思います。

【明治天皇の即位の宣命 原文】
 「現神止大洲国所知須、天皇我詔旨良万止宣布勅命乎、親王諸臣百官人等、天下公民衆聞食止宣布。掛畏伎平安宮爾、御宇須倭根子天皇我、宜布此天日嗣高座乃業乎、掛畏伎近江乃大津乃宮爾、御宇志、天皇乃初賜比定賜倍留法随爾、仕奉止仰賜比授賜比、恐美受賜倍留御代々乃御定有可上爾、方今天下乃大政古爾復志賜比弖、橿原乃宮爾御宇志、天皇御創業乃古爾基伎、大御世袁弥益々爾、吉伎御代止固成賜波牟、其大御位爾即世賜比弖、進毛退毛不知爾恐美坐佐久止宣布大命乎、衆聞食止宣布。(後略)」