第1931話 2019/07/01

『古田史学会報』採用審査の困難さと対策(1)

 「古田史学の会」の編集部体制の強化として編集委員を増員することは既にご報告しましたが、今後の問題点や対策についても、よい機会ですのでご説明したいと思います。
 投稿論文の審査は、特に『古田史学会報』は隔月で発行するため、その審査スピードも要求されます。しかし、この審査で最初に行う先行論文・研究の有無を調べるという作業がかなり困難で、誰でもできるというわけではありません。まずこの投稿論文の新規性の調査確認という問題について説明します。

〔新規性の確認調査〕
 仕事で特許に関わったことがある人には常識ですが、その論文が新規性を有しているかをまず判断します。過去に同様の仮説や考えが先行研究や論文で発表されている場合は、新規性が無いと判断し、不採用となります。ただし、ここに複雑で難しい問題があります。それは特許の専門用語で「選択発明」というもので、同様の先行特許があっても例外的に認められるケースです。この問題は別に説明します。
 古田先生の多元史観・九州王朝説などの発表から40年以上が経っていますから、それ以降に古田学派内で多くの研究論文や口頭発表がなされています。それら全てに先行論文・研究がないことを調べることはかなり困難な作業です。古田先生の著作・論文・講演録を全て読んでおり、関係団体から発行された機関紙類も読んでいる古くからの古田史学の読者や研究者でなければこの作業は不可能です。現在、この作業は主にわたしが行っています。基本的には記憶に基づき、不安であればネット検索したり、過去の刊行物を確認します。
 この先行論文・研究のリサーチが特許庁でも最も大変な作業であることは容易にご理解いただけるものと思います。『古田史学会報』の論文審査でもこの作業が最も難しく、残念ながら採用後に先行研究の存在に気づくというミスも過去にはありました。この作業を「古田史学の会」創立以来わたしが担当しているのは、こうした事情からなのです。将来のためにも古田学派の論文の完全デジタル化によるアーカイブ設立が必要と考えています。このデジタル化はわたしの世代の仕事と考えていますので、手伝っていただける方があれば、ご一報いただけないでしょうか。(つづく)

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