第2286話 2020/11/08

古田武彦先生の遺訓(11)

佐藤信弥さんの

『周 ―理想化された古代王朝』拝読

 今日は佐藤信弥さんの『周 ―理想化された古代王朝』(注①)を拝読しました。この本も『中国古代史研究の最前線』(注②)と同様に周史を研究する上で優れた入門書でした。しかも巻末の豊富な参考文献一覧は、わたしのような初学者にとって勉強の導き手となり、ありがたい配慮です。
 佐藤さんの学問的姿勢やお人柄によるものと思いますが、同書も先行説や異説の紹介がなされ、不明確なことや不安定な課題については、そのことをはっきりと示されており、周代史研究における到達点や弱点が読者にわかるように書かれています。このような執筆姿勢は研究者にとって、とてもありがたいことです。
 たとえば周代暦年研究に関わるテーマとして、第五代穆(ぼく)王について次のような記述があります。

 「厲(れい)王の時代から『史記』では周王の在位年数が明示されるようになる。それ以前の周王で在位年数が示されているのは第五代穆王の五十五年のみであるが、穆王の在位年数をめぐっては種々の議論がある。」121頁

 『史記』には穆王が五十歳で即位し、五十五年在位したとあることから、このような百歳を超える寿命記事を信頼できないため、「種々の議論」が発生しているものと思われます。古代中国史研究において、二倍年暦(二倍年齢)という概念(仮説)がないことに、問題の原因があるとわたしは考えています。(つづく)

(注)
①佐藤信弥『周 ―理想化された古代王朝』中公新書、2016年。2018年。
②佐藤信弥『中国古代史研究の最前線』星海社、2018年。

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