第1652話 2018/04/15

九州王朝系近江朝廷の「血統」論(2)

 天智が「九州王朝の皇女を皇后に迎えても天智の子孫は女系」になると一旦は考えたのですが、よくよく考えてみると、そうではないことに気づきました。
 『日本書紀』によれば、そもそも近畿天皇家の祖先は天孫降臨時の天照大神や瓊瓊杵尊にまで遡るとされ、少なくとも瓊瓊杵尊まで遡れば、近畿天皇家も九州王朝王家と男系で繋がります。歴史事実か否かは別としても、『日本書紀』では自らの出自をそのように主張しています。従って、天智も九州王朝への「血統」的正当性は倭姫王を娶らなくても主張可能なのです。このことに、わたしは今朝気づきました。
 しかし現実的には、瓊瓊杵尊まで遡らなければ男系「血統」が繋がらないという主張では、さすがに周囲への説得力がないと思ったのでしょう。天智の側近たちは「定策禁中(禁中で策を定める)」して、九州王朝の皇女である倭姫王を正妃に迎えることで、遠い遠い男系「血統」と直近の皇女という「合わせ技」で天智を九州王朝系近江朝廷の天皇として即位させたのではないでしょうか。
 この推測が正しければ、『日本書紀』編纂の主目的の一つは、天孫降臨時まで遡れば九州王朝(倭国)の天子の家系と男系により繋がるという近畿天皇家の「血統」証明とも言えそうです。なお、こうした「合わせ技」による「血統」証明の方法には先例がありました。(つづく)

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