第1932話 2019/07/02

『古田史学会報』採用審査の困難さと対策(2)

 『古田史学会報』の投稿論文審査において、新規性と共に重視されるのが進歩性です。特許審査でもこの進歩性が審査されます。すなわち今まで誰も造らなかった新規性のある発明でも、人間社会に役立つという進歩性がないものは特許として認可されません。『古田史学会報』の場合は学問や研究に役立たない、特に古田史学・多元史観の進化発展に寄与しない論文は進歩性が認められないとして不採用になります。
 極端な例でこの進歩性の有無について説明します。たとえば、「聖武天皇は右利きであるという仮説を提起し、証明に成功した」という論文が投稿されたとします。おそらくこのような仮説や研究は誰もしていないでしょうから、新規性は認められたとします。次にその証明方法(特許では実施例)や史料根拠(実験データ)を確認したところ、たとえば現存する聖武天皇の真筆史料を精査し、その運筆の痕跡により右手で書いていることが証明できたとします。その場合、仮説は証明されており学説としては成立します。
 しかし、このような論文自体には恐らく進歩性があるとは見なされないでしょう。もともと人は右利きが圧倒的に多数であることが知られており、聖武天皇も右利きであったことが確認できたとしてもそれは〝どうでもよい〟こととされるでしょう。更に古田史学・多元史観にとってみれば、大和朝廷の聖武天皇が右利きであろうと左利きであろうと、このこと自体は更に〝どうでもよい〟ことであり、多元史観の学問・研究に寄与する仮説とも思われません。もちろん、これほど極端に〝どうでもよい〟論文の投稿は滅多にありません。(つづく)

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