第165話 2008/03/16

例会発表のコツ

 昨日の関西例会から発表時間制限(30分)が設けられましたが、慣れないためか時間超過や途中省略などもありました。日本思想史学会など一般の学会では発表時間制限があるのは当然ですので、事前に何度も練習をして、本番にのぞみます。その際、時間超過は他の発表者や聴講者の迷惑になりますので、きびしく注意されます。これから徐々に発表も上手くなっていかれると思いますが、良い機会ですので、私なりの発表のコツを紹介したいと思います。

 まず、例会発表は研究成果や新発見を発表する場であり、講演会ではありません。したがって、アイデアをダラダラと述べたり、最後まで聞かないと何の発見なのかわからないようではダメです。最後になってやっとわかるのは推理小説の場合は良いのですが、研究発表では不適切です。
 ですから、最初の5分間ぐらいで、何を論証しようとするのか発表テーマの概要について、大枠をまず説明することです。その結果、聞く側もテーマを把握し、心の準備をすることができ、理解がはかどります。
 その際、従来説が何故問題なのか、どのような疑問があるのかも説明しておくと良いでしょう。それがあると、発表される新説がどのように解決するのだろうか と、ワクワク感を抱かせて、集中して聞いて貰えます。なお、研究発表に於いて、従来説や先行説の事前調査は不可欠です。
 次に、論証です。論証とは発表者が「こう思う」「こう思いたい」ということではありません。誰が考えても「そうとしか思えない」あるいは「こう考えるのが最も蓋然性が高く合理的」と、聞いている人が納得できる論理性のことです。ここを勘違いされている発表が、残念ながら少なくありません。アイデアや思いつきの羅列は、論証とは言いません。
 そして、論証する上で不可欠なものが史料根拠です。史料根拠無しの「新説」は単なる思いつきであり、学問的方法ではありませんので、よくよく注意して下さい。
 最後にレジュメの準備ですが、史料根拠に使用する文献の引用掲載はしておきましょう。それがあると、短時間での説明に便利ですから。そして、30分間の内、25分で発表を終え、少なくとも5分間は質疑応答のために残しておくべきです。制限時間一杯の発表は、質問を物理的にさせないこととなり、研究者として不誠実な態度に映ります。
 発表者にとっても、聴講者にとっても貴重な30分です。学問のため有意義に使いたいものです。なお、3月例会の内容は次の通りでした。竹内さんや正木さんの発表は特に優れたもので、会報での発表が待たれます。
 
  〔古田史学の会・3月度関西例会の内容〕
  ○研究発表
  1). 小人の処世術(豊中市・木村賢司)
  2). 藤原宮造営材の調査と運搬(奈良市・飯田満麿)
  3). 記紀・万葉集・風土記を結ぶ(大阪市・前原耿之)
  4). 両面宿儺伝説についての一考察(岐阜市・竹内強)
  5). 『日本書紀』の構成(たつの市・永井正範)
  6). 聖武詔報の再検討ー「白鳳以来、朱雀以前」の新理解ー(京都市・古賀達也)
  7). 伊勢王と筑紫君薩夜麻の接点(川西市・正木裕)
  8). 纏向型古墳の解説(生駒市・伊東義彰)
  9). 『周髀算経』の史料紹介(神戸市・田次伸也)
  10).元暦稿本『万葉集』巻第一の「裏書」の史料紹介(相模原市・冨川ケイ子)
 
  ○水野代表報告
   古田氏近況・会務報告・九州王朝複数宮都説・他(奈良市・水野孝夫)

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