2015年01月17日一覧

第853話 2015/01/17

久しぶりの『三国志』

     短里論争

 本日の関西例会では服部静尚さん(『古代に真実を求めて』編集責任者)から、西村秀己さん(古田史学の会・全国世話人)やわたしから批判されていた「関」と「畿内」の設立についての自説の訂正と反論が行われました。
 討議では、『日本書紀』が九州年号「大化」を何故5年間だけ盗用し、九州年号「白雉」を2年ずらして、これも5年間だけ盗用したのかという疑問について意見が交わされました。合計を10年にしたのは孝徳即位期間の10年にあわせたためと思われますが、『日本書紀』が「大化5年+白雉5年」にした理由がよくわかりません。「大化7年+白雉3年」であれば、白雉元年を2年ずらさずにすむのに、不思議です(九州年号「白雉元年」は652年。『日本書紀』の「白雉元年」は650年)。
 また、『日本書紀』大化2年(646)の改新詔は九州年号の大化2年(696)に藤原宮で出されたとする説と、7世紀中頃とする服部説とで論争が続きましたが、両者相譲らず、結論は今回も持ち越されました。
 正木さん(古田史学の会・全国世話人)からは、「古田の短里説は『魏志』においてさえも成立不能」とする寺坂国之著『よみがえる古代 短里・長里問題の解決』に対して、地図を示し具体的にその誤りを批判されました。また『三国志』に長里が混在した場合、なぜそうなったかの個別の検討が必要とされました。
 魏朝ではいつから短里を公認制定したのかという質問が出され、西村秀己さんから、暦法を周制に変更した明帝ではないかとする見解が示されました。関西例会も久しぶりの『三国志』短里問題で盛り上がりました。
 出野さんからは稲荷山古墳出土鉄剣銘や江田船山古墳出土大刀銘の訓みについての研究が発表されました。稲荷山鉄剣銘に見える「斯鬼」をシキと訓むことについて疑問を呈され、「鬼」を記紀や万葉集・推古朝遺文の万葉仮名で「キ」と訓んだ例はないとされました(百済人の人名「鬼室」は万葉仮名ではない)。万葉仮名(万葉集)では「鬼」を「マ」と訓まれており、「魔」の省略体と紹介されました。そして「斯鬼」を「シマ」あるいは「シクィ」「シクワィ」(二重母音)と訓む可能性を示唆されたのです。少なくとも「シキ」と断定的に訓むべきではないとされました。
 わたしにはまだ出野説の当否はわかりませんが、根拠を提示しての新説ですし、「鬼」は万葉仮名で「キ」と訓まれていないという指摘には、虚を突かれた気持ちです。
 稲荷山古墳出土鉄剣銘や江田船山古墳出土大刀銘の文意や被葬者の位置づけについても興味深い見解を発表されました。『古田史学会報』への投稿を要請しました。
 いずれも素晴らしい発表で、新年も快調な滑り出しとなりました。1月例会の発表は次の通りでした。

〔1月度関西例会の内容〕
1). 「関」と「畿内」と「改新の詔」の検証2(八尾市・服部静尚)
2). 「魏・西晋朝短里」は揺るがない(川西市・正木裕)
3). 稲荷山古墳出土鉄剣銘、江田船山古墳出土大刀銘についての解釈(奈良市・出野正)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
 古田先生近況(新年賀詞交換会 2015.1.10、ギリシア旅行 2015.4.1〜4.8 33人参加)・古田先生購入依頼図書(『真宗聖教全書』昭和15年版掲載の「教行信証」には「主上」の二字が消されている)購入・春日大社に初詣・塚本青史『煬帝』を読む・2月22日「難波宮シンポ」開催・帝塚山大学考古研市民講座「奈良時代の製塩土器」・その他