第18話 2005/08/06

『有明海異変』読後感

 第17話にてお名前を紹介した古川清久さんには『有明海異変』(不知火書房)という素晴らしい著書があります。本年一月、古川さんより贈っていただいたこの本を、一気に読み終えた記憶があります。諫早湾の干拓による環境破壊やダムの問題点などを冷静な筆致と徹底したフィールドワークに基づいて書かれた同書を読んで、わたしはその方法に古田史学と共通するものを感じたのでした。しかも、筆者の暖かい人間性や自然を愛する息吹を感じることのできる本だったのです。

 いわゆる社会運動家の書いた本には、過度な感情論に終始するものや、独りよがりの「正義」感(イデオロギー)で思考停止したものも少なくありませんが、古川さんの著作はそれらとは全く異なったものでした。中でも、ダムに反対しつつも、ある優美なダムの姿(白水ダム・大分県)を写真入りで紹介し讃美する箇所を読んで、古川さんの健全な美意識に深く共感しました。更にダムを壊す公共事業の提言など、現実性を伴った解決策を述べるところも秀逸です。

 わたしはこの本を通じて古川さんの人となりを知り、お付き合いを始めました。とは言っても、電話とメイルのやりとりだけで、お会いしたことはまだありません。古川さんは古田史学に共感して、わたしに著書を贈ってくださったようですが、わたしは古田史学を通じて知己を得たのでした。このように古代史にとどまらず現代史まで勉強できるのは、有り難いことです。
なお、古川さんの論文(歴史関連もあり)はホームページ「有明海・諫早湾干拓リポート1・有明海・諫早湾干拓リポート 2」に掲載されています。

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