第56話2006/01/09

岩走る淡海・補考

 『万葉集』に見える枕詞「岩走る」について、第52話で仮説を発表しました。それは、熊本県球磨川河口の「淡海」を舞台に、宇土半島産の阿蘇ピンク石を船で海上輸送した風景を「岩走る淡海」と表現したことに始まるのではないか、というものでした。この仮説発表以来、賛否両論が寄せられましたので、一部をご紹介したいと思います。
 まずは武雄市の古川清久さん(本会会員)からで、基本的に賛成された上で、阿蘇ピンク石が産出する馬門地区は宇土半島の北側にあり、球磨川河口とは反対側であることが問題点とご指摘いただきました。さすがは現地に詳しい古川さん。なるほどと思いました。私の仮説の弱点を見事に指摘していただき、感謝申し上げます。今後の検討課題にしたいと思います。
 次は大和田さんという方からのご意見。 3230番歌の「石走る甘南備山」等に着目され、「岩走る」とは石垣や列石の表現ではないかとされ、「石走る甘南備山」とは神籠石を意味するとされました。確かに雷山神籠石や高良山神籠石など山の急斜面に延々と並ぶ列石を、「岩走る」と表現してもおかしくありません。他方、「岩走る淡海」についは、「淡海」を博多湾岸付近の海とされ、倭国の玄関口を護る石垣があったのではないかと推測されています。これも、なかなか面白い説だと思いました。
 こうした指摘や別の違った仮説の提起は、学問にとって大切なことで、有り難く受け止めたいと思います。わたしも更にじっくりと考えたいと思います。歴史の真実は逃げたり無くなったりしませんから、時間をかけて検討します。また、進展があれば御報告させていただきます。

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