第1499話 2017/09/11

ゲルマン語に二倍年暦の痕跡発見

 山口県周南市の大竹義則さんからメールをいただきました。大竹さんは1980年頃からの古田先生の著作の愛読者で、わたしの「洛中洛外日記」も読んでおられるとのこと。メールにはゲルマン語系言語の中に二倍年暦らしき記述のあることが紹介されていました。これまで、アイヌ民族以外の北方系民族に二倍年暦が使用されていたとの史料を知りませんでしたので驚きました。
 紹介していただいた史料は浜崎長寿著『ゲルマン語の話』(大学書林、1976年。233頁)で、ドイツ語を中心としたゲルマン語系言語の文字や音韻、語彙、文法上の特性などを記述した小冊子とのこと。その中の「Ⅵ章・意味の実態、その2・四季」に、「ゲルマン人にとって、1年は元来、夏と冬を二大軸として構成された」とあり、また、古代ゲルマンの英雄詩『ヒルデブラントの歌“Hildebrandslied”』の中に「夏と冬あわせて60」とあり、これが現在の30年に相当すると記されています。大竹さんによると「このほかには二倍年暦に関連する記述はありません」とのことです。
 更に大竹さんから次のようなメールも届きました。
 「(前略)これまでの古田さんや古賀さんの記述、そして気候的に雨季乾季の明瞭な熱帯〜亜熱帯に広がるサバナ気候帯(1年を2期に分けやすい)が頭にあったからです。
 ゲルマン人の認識では、四季ではなく冬夏の2分が明瞭であるとのことですが、このことで思い出すのは、ある気候学者(名前は忘れました)の随筆に、『カナダのような高緯度地方では、夏冬の感覚は、気温の高低よりも、昼の長い明るい季節と夜の長い暗い季節としてとらえている』いうような記述があったことです。この感覚が冬夏2期の区分につながるのかなと思いました。」

 古田先生も二倍年暦の淵源を、たとえば「春耕秋収」のような農耕に由来するケース、熱帯地域の雨期・乾期に由来するケース、海洋地域の西風・東風で季節を二分するケースなどを想定されていました。今回の大竹さんの調査によれば、高緯度地域の夏と冬における昼間の長さの大きな変動により、一年を二分するというケースが新たに付け加わったことになります。
 わたしが「二倍年暦の世界」「続・二倍年暦の世界」(『新・古代学』7集、8集、新泉社。2004年、2005年)を発表したときは、主に日本語訳の書籍が入手しやすい中国・インドそしてローマやギリシアなどの古典調査に重点を置きましたが、今回のように北方系民族にも二倍年暦の痕跡があるのですから、古代ゲルマン神話やアイスランドエッダなどの北欧伝承を調査する必要を感じました。登場人物の年齢表記などに二倍年暦が発見できるかもしれません。
 貴重な情報を提供していただいた大竹さんに感謝いたします。「洛中洛外日記」読者からこうしたメールをいただけることは、研究者としてとてもありがたいことです。

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