第844話 2014/12/29

『王代記』の善光寺関連記事

 「洛中洛外日記」843話で紹介した『王代記』の「年代記」部分の金光元年(570)に記された次の記事ですが、「物部遠許志」は『日本書紀』には「物部尾輿」とあり、その違いが気になっていました。

 「天下熱病起ル間、物部遠許志大臣如来召鋳師七日七夜吹奉トモ不損云々」

 調べてみると、この「物部遠許志」とするのは『善光寺縁起』などの善光寺関連史料に見える用字でした。そこで『王代記』にある善光寺関連記事を調べてみると、次のようなものがありました。

○善記四年(525)善光寺建立
 「帝王廿七代継躰天王之御代廿五年。善記四年ニ改易ス。元年ハ壬寅也。斯年号ノ始成。此時善光寺ハ建立ス」

○貴楽元年(552)善光寺如来が百済より渡来
 「貴楽二年、元年壬申年、善光寺如来始来リ。自百済国二人使内裏進上攬居」(『王代記』部分)
 「壬申釼金 貴楽 善光寺如来始テ百済ヨリ来玉フ。十月十三日辛酉日也。内裏ハ大和国山部郡。」(「年代記」部分)

 この貴楽元年の記事は『日本書紀』欽明紀に依ったものと思われますが、善記四年記事は当の『善光寺縁起』にも見えない記事です。おそらくこれも「天下熱病」記事と同様に九州王朝系史料に基づいたものではないでしょうか。これからの『王代記』研究が楽しみです。

 本稿が2014年最後の「洛中洛外日記」となります。一年間のご愛読、ありがとうございました。それではみなさま良いお年をお迎えください。

(追記)先ほど、明石書店から『古代に真実を求めて』18集の初校用ゲラが送られてきました。特集企画「盗まれた『聖徳太子』伝承」用の拙稿の校正を正月休みに行います。来春の出版が楽しみです。

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