第1113話 2015/12/29

『江の島縁起絵巻』に九州年号「貴楽元年」

 12月の関西例会では服部静尚さん(『古代に真実を求めて』編集長)から九州年号史料の県別分布が報告されました。その上で九州年号史料の「空白」地域があることを指摘され、何か意味があるのではないかとの問題提起がなされました。それに対して、九州年号が記された中近世史料の所在地分布は古代において九州年号が使用されていた分布とは異なるので、分けて考えた方がよいと、わたしは主張しました。
 服部さんが作成された分布図では神奈川県が九州年号史料の空白県となっていたことから、神奈川県在住の冨川けい子さん(古田史学の会・会員、相模原市)が同県藤沢市の『江の島縁起絵巻』(室町時代成立)に九州年号の「貴楽元年壬申」(552)が記されていることを発見され、ご自身のfacebookで報告されました。わたしはこの史料の存在を全く知らなかったので、この地域で「貴楽」という九州年号が使用されていたことに驚きました。『江の島縁起』は平安時代には成立していたようで、今後の古写本の調査と史料批判が期待されます。
 この「貴楽」という九州年号は元年が552年(欽明13年)に相当し、いわゆる「仏教伝来」の年と一元史観の通説ではいわれています。また、この年が「末法時代の始まりの年」とする説もあり、このことと九州年号が貴楽と改元されたことに、何か関係があるのかという点に、わたしは興味を持っているのですが、今後の検討課題です。
 いずれにしましても、まだ発見・報告されていない九州年号史料が各地にあることと思われますので、会員の皆さんによる調査が待たれるところです。

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