初伝時の仏像と三角縁仏像鏡
8月20日の関西例会で、竹村氏がわが国への仏教初伝時の仏像の様式を検討され、初伝時の仏教は中国南朝ではなく北魏からの影響が強いという説を発表されました。この考えは有力な仮説だと思います。
わたしも、「倭国に仏教を伝えたのは誰か」(『古代に真実を求めて』1集、1996年)という論文の中で、初伝僧として糸島雷山千如寺の清賀上人を提起しました。そして、その千如寺の本尊である千手観音の中に清賀上人の持仏とされる小仏像が埋め込まれているのですが、目がつり上がったちょっと異様な仏像なのです。
ところが、今から10年ほど前に仕事で上海に行ったとき、上海博物館を訪れたのですが、時代別に展示してあった仏像の中で、北魏の仏像が千如寺の体内仏に顔がそっくりだったのです。従って、清賀上人は北魏の、あるいは北魏経由の僧侶ではないかと考えていたのです。今回の竹村さんの発表はわたしの考えと一 致するものであり、興味深く傾聴しました。
なお、竹村さんが調査された対象は「仏像」だけでしたので、古墳時代に出土している「三角縁仏像鏡」の存在を指摘し、これらも調査対象にされることを要望しました。今後の継続調査に期待しています。
当日の発表は次の通りでした。
〔古田史学の会・8月度関西例会の内容〕
○研究発表
1). 仏教初伝時の仏像(木津川市・竹村順弘)
2). 『古鏡銘文集成』の裏文字銘文(京都市・岡下英男)
3). 河内戦争後の畿内–律令制の始まり(横浜市・冨川ケイ子)
4). 厳然として凛として立つ国・他(豊中市・木村賢司)
5). 古代大阪湾の新しい地図(豊中市・大下隆司)
6). 論争の提起に応えて(川西市・正木裕)
○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
古田氏近況・会務報告・三井寺の「白鳳八年」・平城京の観世音寺・他(奈良市・水野孝夫)