ドラマ「御上先生」と古田先生
感動的なテレビドラマが最終回を迎えました。松坂桃李さん主演の「御上先生」です(注①)。主人公の御上(みかみ)先生は文科省のエリート若手官僚です。同期の友人に裏切られ、省内の出世競争で追い落とされ、県内トップの進学校「隣徳学院高校」に教師として出向(左遷)させられます。彼を「おかみ」と呼ぶ生徒達と次第に心を通わせ、悩み苦しみながら成長する生徒達と一緒に、日本の教育を守るために政府・文科省と同学園の癒着(政治家の子弟の不正入学の見返りとしての助成金獲得システム)を暴くという、本格的で重苦しい社会派学園ドラマです。
全編を通じて流れるBGM「仰げば尊し」の旋律とワンオクロック(ONE OK ROCK)がエンディングで歌う「Puppets Can’t Control You」も印象的な名曲でした。何よりも御上先生が毎回何度も生徒に語るセリフ、「そうだね」「考えてみようか」が示すように、生徒を肯定し、生徒自身が考えるよう促し、会話に命令形を用いないことにも感動しました。
最終話を見て、このドラマの主題が〝生徒の自殺を防ぐ〟〝子供たちを自殺に追い込む日本社会の崩壊を教育により防ぐ〟というところにあることに気づきました。毎回のように生徒一人一人がクローズアップされ、放置すれば自殺しかねないその生徒を救いあげるという御上先生の言葉と行動と、国家権力や社会の不正義との戦いとが重なり合って展開するストーリーは、子供の自殺率が他国と比べても異常に高い日本社会(注②)の現実を思い起こさせるものでした。
このドラマが訴えたかった主題〝子供の自殺〟に気づき、わたしは次の古田先生の言葉が脳裏に浮かびました。
「わたしの高校教師としての唯一自慢できることがあるとすれば、それは教え子を一人も自殺させなかったことです。これはわたしの誇りです。」
「御上先生」を視て、この言葉の意味を、ようやくわたしにも深く理解することができたようです。
(注)
①『御上先生』(みかみせんせい)は、2025年1月19日から3月23日までTBS系「日曜劇場」枠にて放送されたテレビドラマ。主演は松坂桃李。東大卒のエリート文科省官僚の御上孝が、新規に制定された官僚派遣制度により事実上の左遷として私立高校「隣徳学院」への出向が命じられ、高校3年生の担任として教壇に立つ姿を描く。脚本 詩森ろば、製作 TBSテレビ。(出典:『ウィキペディア』)
②G7各国で、十代の子供の死因第一位が自殺であるのは日本だけ。(厚労省「自殺対策白書」)