第2915話 2023/01/13

多元史観から見た古代貨幣「和同開珎」

本日の「多元の会」主催のリモート研究会では、清水淹(しみず ひさし、横浜市)さんにより、無文銀銭の研究「謎の銀銭」が発表されました。35年前、わたしが古田史学に入門し、最初に研究したテーマが「九州年号」と「古代貨幣」だったこともあり(注①)、興味深く拝聴しました。
七世紀以前の九州王朝(倭国)時代の貨幣として、出土が知られているのが無文銀銭と富本銅銭です。王朝交代後の大和朝廷の最初の貨幣は和同開珎(銀銭・銅銭)であり、そのことが『続日本紀』(注②)に次のように記されています。

○「五月壬寅、始めて銀銭を行ふ。」元明天皇和銅元年条(708年)。
○「(七月)丙辰、近江国をして銅銭を鋳(い)しむ。」同上。
○「八月己巳、始めて銅銭を行ふ。」同上。

これらは和同開珎(銀銭・銅銭)の発行記事ですが、いずれも「始めて」とあり、この銀銭と銅銭が大和朝廷にとって最初の貨幣発行であると主張しています。なお、この銅銭・銀銭の銭文が「和同開珎」であることを『続日本紀』には記されておらず、その理由は未詳です。(つづく)

(注)
①古賀達也「続日本紀と和同開珎の謎」『市民の古代研究』22号、1987年。
同「古代貨幣『無文銀銭』の謎」『市民の古代研究』24号、1987年。
同「古代貨幣『賈行銀銭片』の謎」『市民の古代ニュース』65号付録、1988年。
これら三編は、『古代に真実を求めて』第3集(明石書店、2000年)に再録した。
②新日本古典文学大系『続日本紀 一』岩波書店、1989年。

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