第1767話 2018/10/06

土器と瓦による遺構編年の難しさ(4)

 土器編年で思い出すことに古田先生からお聞きした次のような編年方法があります。三十年ほど以前のことと記憶していますが、当時、ある発掘現場で出土土器の編年の際に学芸員が様式別に振り分けていたそうで、そこからは編年が異なる複数の土器が出土していたので、様式別に土器の出土量の比率を計算し、その比率の違いによって遺跡の編年を行うべきではないかと古田先生は提案されたそうです。ところが学芸員はそのようなことは行ったことがなく困った顔をされたそうです。
 恐らく当時は出土した土器の中で一番新しいものの編年から遺跡の年代(上限)を推定されていたと思います。土器は多くが割れた状態で出土しますから、編年毎の個数を割り出すということは大変です。従って、異なる編年毎の出土数分布の差異を相対編年に利用するという考えは普及していなかったと思われます。近年の発掘調査報告書などにはそうした視点も取り入れて遺跡の編年に利用するという事例もありますので、30年前に古田先生が提案された方法が正しかったことがわかります。
 このような研究対象物の特性分布を二次元解析や三次元解析する方法は自然科学の世界では必要であれば当然のように行いますから、ようやく日本の考古学界もその水準に到達しつつあるのかもしれません。他方、近畿以外の地方での発掘調査は予算も時間も人員も十分ではないため、懸命に発掘調査に従事している考古学者や地方自治体の学芸員にそこまで求めるのは酷かもしれません。
 次回からは「瓦による遺構編年の難しさ」に入りますが、土器とはまた異なった難しさを持っています。(つづく)

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