『古田史学会報』179号の紹介
遅くなりましたが、今月発行された『古田史学会報』179号を紹介します。同号には拙稿「柿本人麻呂系図の考察」を掲載して頂きました。同系図は25年ほど前に古田先生からコピーをいただいたもので、始祖を柿本人麻呂とする佐賀県の柿本家の系図です。聞くところでは、佐賀県には同様に人麻呂を始祖とする柿本家が数軒あるそうで、古田先生は注目されていました。しかし、本格的に著作などで論じられた形跡がありませんので、この系図の取り扱いに慎重だったように思われます。そうした経緯もあって、亡くなられた先生に代わって、わたしが研究を進めなければならないと思い、今回、発表することにしたものです。なかなか史料批判が難しい系図でしたが、人麻呂が遣唐使として二度渡唐したことなど、他の史料には見えない伝承もあり、歴史事実を反映した部分もありそうです。
一面の正木稿は「古田史学の会」関西例会で発表されたテーマで、賛否両論ありましたが、わたしは興味深い仮説と思いました。朱鳥元年(686年)に二人の有力者が没したとするもので、一人は天武天皇、もう一人を筑紫君薩夜麻とする仮説です。そして、朱鳥改元は、薩夜麻崩御による新天子即位によるものとされました。古田先生は、『日本書紀』に薩夜麻が没したと考えられる記事が見えないことから、王朝交代の701年以後まで薩夜麻が生きていたと考えておられました。今回の正木仮説は従来にはなかった視点と発想ですので、これからの論争や検証を待ちたいと思います。
千葉市の倉沢良典さんは新会員で、会報デビューとなりました。今後のご活躍が期待されます。
新年1月21日(日)開催、新春古代史講演会(キャンパスプラザ京都)のカラー刷案内チラシが同封されていますが、同デザインは竹村順弘さん(古田史学の会・事務局次長)によるもので、拙宅玄関にも貼っています。新春落語講演会と勘違いされる方もありますが、かなり好評です。演題にある「正倉院」(講師:本出ますみさん)の文字に興味を持たれる女性が多く、ご近所の方からも「参加したい」との声が今まで以上に寄せられています。
179号に掲載された論稿は次の通りです。投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚程度)に配慮され、テーマを絞り込んだ簡潔な原稿とされるようお願いします。
【『古田史学会報』179号の内容】
○「朱鳥改元」と「蛇と犬が倶に死ぬ」記事の意味するもの 川西市 正木 裕
○柿本人麻呂と第一次大津宮 たつの市 日野智貴
○柿本人麻呂系図の考察 京都市 古賀達也
○裴世清は十余国を陸行した 京都市 岡下英男
○古田武彦古代史セミナー2023に初参加の記 千葉市 倉沢良典
○「耶靡堆」とは何か 姫路市 野田利郎
○「壹」から始める古田史学・四十五 「倭奴国」と「邪馬壹国・奴国」② 古田史学の会・事務局長 正木 裕
○新春古代史講演会(1月21日・京都市)のご案内
○「古田史学の会」書籍特価販売のご案内
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会・関西例会のご案内
○編集後記 西村秀己