第3300話 2024/06/11

『古田史学会報』182号の紹介

 本日届いた『古田史学会報』182号を紹介します。同号には拙稿〝「天皇」銘金石文の史料批判 ―船王後墓誌の証言―〟を掲載して頂きました。

 九州王朝(倭国)と近畿天皇家(後の大和朝廷)との関係について、古田先生は、701年の王朝交替より前は、倭国の臣下筆頭の近畿天皇家が七世紀初頭頃からナンバーツーとしての「天皇」号を称していたとされていましたが、晩年には、七世紀の金石文などに見える「天皇」はすべて九州王朝の天子の別称であり、近畿天皇家が天皇を称するのは王朝交代後の文武(701年)からとする新説を発表されました。

 本稿において、わたしは古田旧説を支持しており、その根拠として船王後墓誌(国宝)に見える三名の天皇は、通説通り敏達天皇・推古天皇・舒明天皇でよいとし、古田新説は論証が成立していないとしました。

 一面に掲載された日野稿は、近畿天皇家皇族の呼称「皇弟・皇子・皇女」の実体や淵源について、『記紀』表記例を比較して論じたものです。更には天皇号の成立を天武からとする通説を批判し、船王後墓誌などを根拠に、敏達や用明は天皇を称していたとし、天智の不改常典に至り天皇号が世襲されるようになったとする仮説を発表しました。今後の論争や検証が待たれますが、とても興味深い論稿でした。

 なお、次号回しになった採用決定稿が複数ありますが、順次掲載していきます。

 『古田史学会報』に論文を投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚)に配慮され、テーマを絞り込み簡潔でわかりやすい原稿にしてください。地域の情報紹介や面白い話題提供なども歓迎します。
長文の論文は『古代に真実を求めて』に投稿してください。次号28集の特集テーマは「風土記・地誌の九州王朝」です。
182号に掲載された論稿は次の通りです。

【『古田史学会報』182号の内容】
○皇弟・皇子・皇女の起源 たつの市 日野智貴
○さまよえる狗奴国と伊勢遺跡の謎 吹田市 茂山憲史
○緊急投稿「不都合な真実に目をそむけたNHKスペシャル」(下) 川西市 正木 裕
○小論・藤原宮の大溝SD1901A仮設運河説を考える 杉並区 新庄宗昭
○土佐国香長条里七世紀成立の可能性 高知市 別役政光
○「天皇」銘金石文の史料批判 ―船王後墓誌の証言―
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会・関西例会のご案内
○会員総会・記念講演会のお知らせ
○「会員募集」ご協力のお願い
○『古田史学会報』原稿募集
○編集後記 西村秀己

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