『古田史学会報』164号の紹介
先週、『古田史学会報』164号が発行されましたので紹介します。一面に掲載された服部稿は、わが国おける仏教や仏典受容に関する考察で、古田学派における同分野での先駆的な研究の一つです。古田史学での仏典受容史研究については、古田先生が『失われた九州王朝』(第三章 高句麗王碑と倭国の展開 「阿蘇山と如意宝珠」)で触れられたのが最初です。そこでの示唆を受けて、わたしも論稿(注)を発表したことがあります。
今回の服部稿は、九州王朝の時代において、女性が法華経と無量寿経(阿弥陀信仰)をどのような経緯で受け入れたのか(支持したのか)という従来にない新たな視点で論じられたもので、注目されます。女性の仏教信仰や関連仏典に関しては、「女人成仏」をテーマとした多くの論考が宗教関連学界で発表されていますが、多元史観・九州王朝説に基づく研究はまだ少なく、過去には古田先生が講演会で、「トマスの福音書(ナグ・ハマディ文書)」研究に関わって触れられたことがあり、今井俊圀さん(古田史学の会・全国世話人、千歳市)により、「『トマスによる福音書』と『大乗仏典』 古田先生の批判に答えて」(『古田史学会報』74号、2006年6月)が発表されたことがある程度です。今後の後継研究の登場が待たれます。
164号に掲載された論稿は次の通りです。投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚程度)に配慮され、テーマを絞り込んだ簡潔な原稿とされるようお願いします。
【『古田史学会報』164号の内容】
○女帝と法華経と無量寿経 八尾市 服部静尚
○会員総会と古代史講演会のお知らせ
○九州王朝の天子の系列(中) 川西市 正木 裕
利歌彌多弗利から、「伊勢王」へ
○何故「俀国」なのか 京都市 岡下英男
○斉明天皇と「狂心の渠」 今治市 白石恭子
○飛鳥から国が始まったのか 八尾市 服部静尚
○「壹」から始める古田史学・三十
多利思北孤の時代Ⅶ ―多利思北孤の新羅征服戦はなかった― 古田史学の会・事務局長 正木 裕
○『古田史学会報』原稿募集
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会・関西例会のご案内
○編集後記 西村秀己
(注)古賀達也「九州王朝仏教史の研究 ―経典受容記事の史料批判」『「九州年号」の研究』ミネルヴァ書房、2012年。