第3209話 2024/01/27

「新年の読書」二冊目、

  清水俊史『ブッダという男』(1)

 この年末年始は、『倭国から日本国へ』(『古代に真実を求めて』27集、明石書店)の編集や『東日流外三郡誌の逆襲』(八幡書店)の執筆、福岡市と京都市での講演会が重なり、毎年恒例としていた「新年の読書」は『松本清張全集33』(注①)の一冊にとどまっていたのですが、ようやく二冊目の清水俊史『ブッダという男』(注②)を読み始めることができました。

 著者の清水俊史さんは新進気鋭の若手仏教研究者で、自著(注③)出版に当たり東京大学の某教授らから圧力があり、そのことがアカハラとしてマスコミから注目されたこともありました。それが古田先生の『親鸞思想』出版妨害事件(注④)と似ていたことから、同書を「新年の読書」の一冊に選びました。「あとがき」には、アカハラの経緯や著者の苦渋が次のように赤裸々に綴られています。

 「(前略)大学教職に就きたければ出版は諦めろと警告された。(中略)その頃の私は任期付きの研究職にすぎず、立場の弱い者は見殺しにされる現実に打ちひしがれ、筆を折った。(中略)
これまでの研究人生を振り返ると、艱難辛苦が続き、とうとう世俗の栄達には恵まれなかったが、それでも私を応援してくださる声に与ったことは、仏教者として誠に幸いである。才がありながらも十全に開花させる機会を与えられずに消えていった者たちの無念さは如何ばかりであろうか。
菩提資糧に励む名もなき菩薩たちに本書を捧げたい。」

 「新年の読書」にこの本を選んだのには、もう一つ理由がありました。それは、釈迦を「男女平等主義者」とする近年の研究動向に疑義を抱いていたわたしに、一つの〝明解〟を与えてくれそうな予感があったからです。(つづく)

(注)
①松本清張『古代史疑・古代探求 松本清張全集33』文藝春秋、1974年。
古賀達也「洛中洛外日記」3196~3198話(2024/01/07~09)〝新年の読書、松本清張「古代史疑」 (1)~(3)〟
②清水俊史『ブッダという男 ――初期仏典を読みとく』筑摩書房、2023年12月。
③清水俊史『上座部仏教における聖典論の研究』大蔵出版、2021年。
④古賀達也「洛中洛外日記」3094~3095話(2023/08/15~18)〝論文削除を要請された『親鸞思想』(1)~(2)〟

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