「ヒトの寿命」は38歳、DNA研究で判明
古代文献に見える長寿記事(90~120歳)を二倍年暦の痕跡とする論文を多数発表してきましたが、対象は西洋や東洋の古典に及びましたので、英文論文として発表するよう古田先生から勧められました。それで書いたのが“A study on the long lives described in the crassics”です。「古田史学の会」ホームページ「新・古代学の扉」収録の“Phoenix -Goddess of truth never dies-”(2007年)に掲載されていますので、ご覧いただければ幸いです(注①)。
こうした研究によるまでもなく、古代人の寿命は短く、文明の発展により食糧事情が改善され医学も進歩し、寿命が延びたことは明らかです。最新の研究では動物の寿命を決めるDNAのメカニズムが解明され、ヒトの「自然な」寿命が38歳であることが判明したそうです。この情報を茂山憲史さん(『古代に真実を求めて』編集部)から教えていただきました。この科学研究の成果は二倍年暦の傍証になるのではないかとのことでした。
同記事を要約して転載します(注②)。それにしても科学は生命メカニズムについて、ここまで解き明かしつつあるのかと、驚きました。
【以下、要約して転載】
生物の老化と寿命は生物学の重要なテーマだが、寿命の長さを決める特定遺伝子は見つかっていない。最近、オーストラリアの研究チームがDNAメチル化という現象を用いて生物の寿命を推定する方法を開発した。その計算法によって、人間の自然な寿命はわずか38年という結果が出た。学術ニュースサイトThe Conversationが報じた。
生物の寿命は野生動物保護や漁業資源管理に必要な情報だが、ある生物種が何歳まで生きられるのかを調べることは難しい。それを調べるためには長期間にわたる観察が必要で、ほとんどの推定値は飼育された少数の個体データから出されている。
この問題を解くカギとして、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO、注③)の研究者らは、DNAメチル化という現象に着目した。これはDNAの一部にメチル基が付加される現象で、遺伝子の発現を調整する役割を担い、発生から発ガンまで幅広く関わっている。
研究者らは脊椎動物種の252のゲノムデータを収集し、既知の生物の寿命データと比較・分析を行った。すると、42個の遺伝子でDNAメチル化が起こる場所を調べることにより、寿命を推定できることが分かった。現存する脊椎動物の中で最も長生きとされるホッキョククジラの場合、推定寿命は268年。現在までに確認されているホッキョククジラの最高齢は211歳で、この個体はさらに長生きする可能性がある。
絶滅したヒト属の寿命も推定された。ネアンデルタール人とデニソワ人の最大寿命は37.8年であった。この手法での人間の推定寿命も38.0年で、絶滅した親戚たちとほぼ同じだ。有史以前の寿命は20~30年と考えられており、人間が自然に生きられる時間は長くても40年程度とDNAにも定められていたのだ。
(注)
①論文英訳については中嶋峯雄先生(1936~2013年。国際教養大学初代理事長・学長)のご助力を賜った。記して感謝したい。
Koga Tatsuya“A study on the long lives described in the crassics”
http://www.furutasigaku.jp/epdf/phoenix1.pdf
②「人間の本来の寿命は38年だった!DNA情報で判明、30代で体力がガクッと落ちる理由確定、40代以降は全員ゾンビ!」TOCANA、2019.12.16。
https://tocana.jp/2019/12/post_131817_entry.html
③わたしが化学会社に勤務していたとき、来日したCSIROの研究者と会話する機会があった(愛知県一宮市のIWS日本支社にて)。オーストラリアなまりの彼の英語と日本語なまりのわたし下手な英語で、対話がほとんど成立しなかった情けない記憶がある。