飛鳥藤原出土の評制下荷札木簡の国々
飛鳥地域(飛鳥池遺跡・石神遺跡・苑池遺跡・他)と藤原宮(京)地域からは約45,000点の木簡が出土しており、それにより七世紀後半から八世紀初頭の古代史研究は飛躍的に進みました。そのなかには350点ほどの評制時代(七世紀後半)の荷札木簡があり、飛鳥宮時代(天智・天武・持統)と藤原宮時代(持統・文武)の近畿天皇家の影響力が及んだ範囲(献上する諸国)を確認することができます。これら大量の木簡という同時代史料と『日本書紀』の記事とを比較検証することにより、戦後実証史学を支える史料批判が大きく進みました。もし、筑紫・太宰府からも大量の木簡が出土していたなら、九州王朝研究は格段に進歩していたことを疑えません。
この九州王朝時代の七世紀後半、大和の〝近畿天皇家の宮殿〟に産物を献上した諸国・諸評がわかるという荷札木簡群の存在は、わたしたち古田学派にとってもありがたいことです。そこで、市大樹さんの名著『飛鳥藤原木簡の研究』(注)に収録されている「飛鳥藤原出土の評制下荷札木簡」にある国別の木簡データを飛鳥宮地域と藤原宮(京)地域とに分けて点数を紹介します。皆さんの研究に役立てていただければ幸いです。
わたしの恣意的な判断を一切入れず、市さんの分類をそのまま採用しました。なお、飛鳥宮地域とは飛鳥池遺跡・飛鳥京遺跡・石神遺跡・苑地遺構・他のことで、藤原宮(京)地域とは藤原宮跡と藤原京跡の遺跡のことです。その詳細は市さんの本をご参照下さい。
【飛鳥藤原出土の評制下荷札木簡】
国 名 飛鳥宮 藤原宮(京) 小計
山城国 1 1 2
大和国 0 1 1
河内国 0 4 4
摂津国 0 1 1
伊賀国 1 0 1
伊勢国 7 1 8
志摩国 1 1 2
尾張国 9 7 17
参河国 20 3 23
遠江国 1 2 3
駿河国 1 2 3
伊豆国 2 0 2
武蔵国 3 2 5
安房国 0 1 1
下総国 0 1 1
近江国 8 1 9
美濃国 18 4 22
信濃国 0 1 1
上野国 2 3 5
下野国 1 2 3
若狭国 5 18 23
越前国 2 0 2
越中国 2 0 2
丹波国 5 2 7
丹後国 3 8 11
但馬国 0 2 2
因幡国 1 0 1
伯耆国 0 1 1
出雲国 0 4 4
隠岐国 11 21 32
播磨国 6 6 12
備前国 0 2 2
備中国 7 6 13
備後国 2 0 2
周防国 0 2 2
紀伊国 1 0 1
阿波国 1 2 3
讃岐国 2 1 3
伊予国 6 2 8
土佐国 1 0 1
不 明 98 7 105
合 計 224 126 350
(注)市 大樹『飛鳥藤原木簡の研究』(塙書房、2010年)所収「飛鳥藤原出土の評制下荷札木簡」による。