放棄された巨大石造物と九州王朝
昨日の関西例会では、意表を突いた新説が竹村順弘さんより発表されました。それは、古代の巨大石造物として有名な播磨の石宝殿などが建造途中で放棄され たのは、九州王朝の滅亡によるものではないかという仮説です。700トンもある巨大石造物ですから、強大な権力者による一大プロジェクトと考えられます が、それなら何故建造途中で放棄されたのかが不明です。こうした問題意識を竹村さんは持たれ、九州王朝の滅亡という国家的変動がその理由ではないかと考え られたのです。これは、言われてしまえばその通りで、従来の一元史観では説明できないテーマではないでしょうか。この問題も『古田史学会報』に書いていた だく予定ですので、お楽しみに。
冨川ケイ子さんは前月に続いて、中巌円月の『日本書』が禁書になったことによる後世への影響について発表されました。今回は水戸光圀が林羅山らによる『本朝通鑑』編集に圧力を加え、皇国史観一辺倒に記述を変更させたことなどが紹介されました。これも日本思想史上の貴重なテーマで、これからの展開が楽しみで す。
また、新入会の高橋勲さんからは神武の上陸地点についての発表があり、質疑応答が活発になされました。新人の参加により、関西例会はますます白熱してきました。二次会は久しぶりに西井さんの幹事復活で、こちらも盛り上がりました。
〔古田史学の会・4月度関西例会の内容〕
○ビデオ鑑賞「東アジア文化と日本」
○研究発表
1)『史記』と『漢書』(豊中市・木村賢司)
2)筑後将士軍談・他(木津町・竹村順弘)
3)中国歴代皇帝即位年と年号(奈良市・飯田満麿)
4)中巌円月『日本書』がもたらしたもの・その2(相模原市・冨川ケイ子)
5)九州年号のONライン−「大長」年号の史料批判−(京都市・古賀達也)
6)神武の上陸地点「蓼津」の発見(長岡京市・高橋勲)
○水野代表報告
古田氏近況・会務報告・大和三山多元成立説・他(奈良市・水野孝夫)