2017年06月05日一覧

第1413話 2017/06/05

ノートの書き方と論文の書き方

 わたしが勤務先で使用しているパソコンには社内外からの様々な情報や連絡メールが届きます。多い日には数十件のメールが届くこともあり、そんな日は朝から緊急メールの返信作業だけで半日かかります。
 そのようなビジネスレターの中に、古代史論文執筆にも役立ちそうな解説がありましたので、転載し若干の説明をします。『古田史学会報』への投稿論文執筆のご参考にしていただければと思います。

《以下、転載》
(前略)つまり、ノートの書き方など、みんなバラバラなのだ。
 ただし、一言断っておくと、どんなノートを取っていようとも、最終的に外部に出す文書を作成する場合には、「人に理解される」内容に仕上げられる能力がある。「文書化」の基本を押さえているからだ。
 文書化の基本となるのは、以下の7つの基本原則である。

 チャンキングの原則:情報を小さなかたまり(チャンク)に分割する
 関連性確保の原則:1つのチャンクでは1つのテーマだけを扱う
 ラベル付けの原則:チャンクの内容の概略がすぐに分かるように見出しを付ける
 継続性の原則:同じ言葉を同じ意味で揺るがせずに使う
 グラフの統合化:グラフや図をその内容の側に添付する
 参照先の添付:興味を持った人がさらに調べることのできる先を記しておく

 これらの基本原則は、本来、学生時代の卒業論文などで担当教授から徹底的に指導されマスターしておくべきものである。その経験がなくとも社会人になったのちに、会社の基本となる文書フォーマットに、この基本原則が反映されていることから、自然とフォーマットなしでもきちんとした文書が作れるようになっていたわけだが、昨今はパワポ文書の氾濫により、原則が完全に崩れてしまっている。その結果、生産性が劇的に下がっていることは以前の記事でも述べた通りである。エグゼクティブたちは、このあたりの原則は、確実にマスターしている。(転載終わり)

 古代史論文に関わらず、“「人に理解される」内容に仕上げられる能力”が重要なことは言うまでもありません。自説を支持していない人が読んでも、その内容を理解してもらえるように書く文章力は実践の中で身につけるしかありません。
 また、あれもこれも論じるのではなく、なるべくテーマを絞り込み、何を論証するのか、どのように読者に読みとってもらいたいのかという「読者理解のシナリオ」も重要です。そして、そのシナリオにそった項目分けと項目を明確に表現する「小見出し」の選定は必須です。長い論稿ほど効果的な「小見出し」が読者の理解を促すだけでなく、自らの論証シナリオの再確認にも役立ちます。
 わたしもこうしたことを意識しながら執筆するのですが、残念ながら誤字・変換ミスは無くなりませんし、今でも失敗の繰り返しです。その点、比較するのもはばかられますが、古田先生の執筆力と校正力は素晴らしいものでした。古田先生からいただいた鉛筆書きの原稿にはいつも校正の跡でびっしりでした。先生がどのような点を意識しながら原稿校正されていたのかがよくわかり、わたし自身も論文執筆の勉強になったものです。そのため、文体が古田先生に似てしまい、先生との共著を出したとき、出版社から文体を変えてくれとクレームがついたこともありました。まだ三十代の頃のことで、懐かしい思い出です。(つづく)