2022年08月17日一覧

第2810話 2022/08/17

『古田史学会報』171号の紹介

 『古田史学会報』171号が発行されました。一面には正木裕さんの〝「室見川の銘版」と倭王の陵墓・祭殿〟が掲載されました。古田先生が『ここに古代王朝ありき』(注)で初めて学界にその重要性を提起した「室見川の銘版」ですが、古田先生に次いで本格的な銘文の史料批判を試みたのがこの正木稿です。倭国(九州王朝)の墓誌(棟札)研究の起点にもなり得る優れた研究ではないでしょうか。
拙稿〝初めての鬼ノ城探訪 ―多元的「鬼ノ城」研究序論―〟を掲載していただきました。これは本年五月に初めて訪れた鬼ノ城の調査報告書を九州王朝説の視点から検討したものです。まだ、初歩的な研究ですので、これからも鬼ノ城を注視していきたいと思います。

 服部さんの論稿〝二倍年暦・二倍年齢の一考察〟は、『論語』など周代史料が二倍年暦(二倍年齢)で書かれているとするわたしの研究への疑問点を提示されたものです。この論争は関西例会などで数年前から行われてきました。〝学問は批判を歓迎する〟とわたしは考えていますので、こうした批判論文はありがたいものです。学問的な反論とは別に、二倍年暦研究の経緯や古田先生との「共同作業」などについて、詳しくご存じない会員や読者のために整理記録しておく必要を感じました。関係者やわたしの記憶が確かなうちにその作業を進めたいと思います。

 171号に掲載された論稿は次の通りです。投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚程度)に配慮され、テーマを絞り込んだ簡潔な原稿とされるようお願いします。

【『古田史学会報』171号の内容】
○「室見川の銘版」と倭王の陵墓・祭殿 川西市 正木 裕
○二倍年暦・二倍年齢の一考察 八尾市 服部静尚
○若狭ちょい巡り紀行 年縞博物館と丹後王国 東大阪市 萩野秀公
○初めての鬼ノ城探訪 ―多元的「鬼ノ城」研究序論― 京都市 古賀達也
○「壹」から始める古田史学・三十七
「利歌彌多弗利」の事績 古田史学の会・事務局長 正木 裕
○古田史学の会 第二十八回会員総会の報告
○古田史学の会・関西例会のご案内

(注)古田武彦『ここに古代王朝ありき 邪馬一国の考古学』朝日新聞社、昭和五四年(一九七九)。ミネルヴァ書房より復刻。