2019年03月09日一覧

第1854話 2019/03/09

「実証主義」から「論理実証主義」へ(4)

 「洛中洛外日記」1843話の〝「実証主義」から「論理実証主義」へ(3)〟を読まれた読者の加藤健さん(古田史学の会・会員、交野市)から次のような感想をいただきました。とても貴重なご指摘でもあり、紹介させていただきます。

【加藤さんの感想】
①西洋哲学における実証主義の定義を明確に知っておきたいと思いました。
②実証を実証たらしめるには精緻な論証が不可欠ですから、村岡先生の言葉は当たり前のことを言っているようにしか思えず、そんなに問題にされること自体不思議な気がします。
 例えば、日本書紀の記事を実証として使えるようにするために,古田先生を始め学派の人達(貴殿も)がどれ程の論証を尽くしたか、を考えればすぐ分かることのように思えるのですが?

 以上の二つの「感想」をいただきました。特に②のご意見は1843話の下記の部分についてのものと思われ、わたしも全く同感です。

 〝他方、古田学派の論者の中には、「史料事実に基づく実証」こそが証明方法の基本であり、従って「論証よりも実証が重要」として、村岡先生の「学問は実証よりも論証を重んずる」を否定しようとされる方もあります。学問研究には「史料事実に基づく実証」もあれば、「史料事実に基づく論証」もあります。その上で、村岡先生の「学問は実証よりも論証を重んずる」という言葉(立場)が成立しています。〟

 また、哲学を専攻され、「古田史学の会」関西例会でアウグスト・ベークのフィロロギーについて連続講義された茂山憲史さん(『古代に真実を求めて』編集委員)の論稿「『実証』と『論証』について」(『古田史学会報』147号、2018.8.13)でも、加藤さんの感想と同様の趣旨が述べられています。たとえば論文末尾の次のような結論です。

 〝ベークのフィロロギーでは、「論証」の要素に「実証」の根拠が含まれ、「実証」の構築に「論証」の助けが支えとなっていた、とわたしは理解しています。〟
 〝「事実」というものはただその「事実」を表現しているだけで、それ以上のことは語りません。「事実」についての「論理展開」があってはじめて、仮説的な真実が発見され、それが「実証」として働き、さらなる「論証」によって「実証」の信頼度が保証されるという構造になっているのです。これこそが、村岡先生や古田先生が目指していたフィロロギーという学問の方法なのです。〟

 加藤さんの〝実証を実証たらしめるには精緻な論証が不可欠〟という感想や、茂山さんの〝さらなる「論証」によって「実証」の信頼度が保証される〟という指摘はことさら難解な見解ではなく、学問や研究を行う上で当然で普通のことと考えていましたので、わたしが古田先生から教えていただいた、村岡先生の「学問は実証よりも論証を重んずる」という言葉を紹介し、その後、古田先生が亡くなられたとたんに、突然のように始まった批判に、「何を言っておられるのだろう」と途惑ったものでした。ところが、いくら説明しても批判される方が現れる状況を見て、古田学派内で古田先生の学問の方法を誤解されている、あるいは不正確に理解されている方が少なくないことに気づき、「洛中洛外日記」でも繰り返し執筆することにしたわけです。そうした中で、茂山さんや加藤さんのような方も現れ、意を強くした次第です。
 次回では、加藤さんや茂山さんが述べられていることを、古田先生が扱われた具体的事例で説明したいと思います。また、加藤さんの感想①にある実証主義の定義の説明は、20世紀初頭にヨーロッパで行われた実証主義から論理実証主義(論理経験主義)、そして反証主義への変遷を解説する際に行いたいと思います。わたし自身ももう少し勉強が必要ですので(特に反証主義における「反証性の有無」についての理解が不十分なため)。(つづく)


第1853話 2019/03/09

久留米大学公開講座で講演します

 昨日、2019年度久留米大学公開講座のパンフレットが届きました。「古田史学の会」からは、わたしと正木裕さん(事務局長)が講演します。日時とテーマは次の通りです。参加お申し込み等の詳細は同大学のホームページをご覧ください(受講料:全4回合計2,500円)。

《九州王朝論 2019》いずれも14:30〜16:00です。
7月 7日(日) 『日本書紀』に盗用された九州の神話 正木 裕さん
7月14日(日) 筑紫の姫たちの伝説《倭国古伝》   古賀達也

 3月末に発行予定の『倭国古伝 姫と英雄と神々の古代史』(『古代に真実を求めて』22集、古田史学の会編・明石書店)の出版宣伝も兼ねて、当地の伝承を中心に九州王朝の歴史を解説します。皆様のご参加をお願いします。
 わたしは講演当日(7/14)久留米泊の予定ですので、ご希望の方がおられれば、講演後に久留米市内で夕食をご一緒したいと思います。ご希望の方は、当日、わたしにお声をかけてください。

○申し込み・問い合わせ先
 久留米大学御井学舎事務部
 地域連携センター
 TEL/FAX 0942-43-4413
E-mailアドレス koukai@kurume-u.ac.jp

○会場 久留米大学御井キャンパス(福岡県久留米市御井町)
    御井本館14A教室