難波朝廷(難波京)一覧

第154話 2007/12/08

難波宮跡に立つ

 先日、用事で大阪に行ったおり、難波宮跡に寄りました。難波宮跡にはいつでも行けるという気持ちから、今まで行ったことがなかったのですが、近年、どうしても行かなければならないという思いが強くなっていました。というのも、前期難波宮は九州王朝の副都であるという仮説を関西例会などで発表していたからです。
 九州王朝の宮殿である太宰府政庁と比較してもはるかに大規模な朝堂院様式を持つ前期難波宮は、その当時の大和朝廷の宮殿様式や発展史と比較しても全く異質で、大規模です。この事実は大和朝廷一元史観では説明がつかず、困っているのです。
 また、『日本書紀』によれば白雉改元の儀式が難波宮で行われており、その完成にともない、九州年号は白雉と改元され、焼失した年には朱鳥と改元されていることも、難波宮と九州王朝との深い関係をうかがわせています。
 こうした事実や、『日本書紀』『万葉集』の中の不可解な記事が、前期難波宮九州王朝副都説によりうまく説明できることなどから、わたしはこの仮説に至りました。今回、難波宮跡に立って、この上町台地の地が、地勢や規模の面からも九州王朝副都にふさわしいものであることを確信できたのでした。

第159話 2008/02/05太宰府と前期難波宮 へ

第160話 2008/02/09 天武の副都建設宣言 へ

第161話 2008/02/10難波宮炎上と朱鳥改元 へ

第163話 2008/02/24前期難波宮の名称 へ

第166話 2008/03/23副都の定義 へ

第173話 2008/05/02 「白鳳以来、朱雀以前」の新理解 へ

第175話 2008/05/12 再考、難波宮の名称 へ

第187話 2008/08/30 大化改新と前期難波宮 へ

第202話 2008/12/30 「白雉改元儀式」 盗用の理由 へ

第242話 2010/01/31 太宰府と前期難波宮
— 九州年号と考古学による九州王朝史復原の研究(まとめとして)


第140話 2007/08/26

「天下立評」

 8月の関西例会で、わたしは「平安時代の「評制」文書─『皇太神宮儀式帳』『神宮雑例集』の史料批判─」というテーマを発表しました。延暦23年 (804)に成立した、伊勢神宮の文書『皇太神宮儀式帳』に「難波朝廷天下立評給時」という記事があり、しかも同文書は太政官に提出された解文、いわば公文書であることを紹介しました。すなわち、平安時代の近畿天皇家内部の公文書に九州王朝の制度であった「評」が記されていることを指摘しました。

 たとえば『日本書紀』はおろか、延暦16年(797)に成立した『続日本紀』でも、700年以前の「評」を「郡」に改竄されているのですが、ほぼ同時期に解文として提出された『皇太神宮儀式帳』には「天下立評」や「評督」という記述が使用されており、近畿天皇家のとった九州王朝隠滅方針にも、内部では温度差のあったことがうかがえます。
  さらに、「難波朝廷天下立評給時」という記事は、九州王朝が評制を施行した時期を難波朝廷(孝徳天皇)の頃、すなわち650年頃であるとするもので、評制開始時期を記した現存する唯一の史料でもあり、貴重です。この頃、太宰府政庁よりもはるかに大規模な朝堂院様式を持つ前期難波宮が完成しており、このこと と「天下立評」とは何かしら関係しているのではないかと想像しています。この件、今後も研究していきたいと思っています。


第95話 2006/08/22

白雉改元と前期難波宮

 昨年から今年にかけて、私は『日本書紀』白雉改元記事の史料批判から、あるいは前期難波宮の規模や様式などから、この難波宮を九州王朝の副都とする仮説を展開してきました。19日の関西例会でも最新の発見について報告しましたが、そのおり竹村順弘さんから、兵庫県南部に白雉年間創建の寺院が多いことを教えていただきました。この事実も難波宮建設と関連が深いと思われますが、「元壬子年」木簡の出土地も芦屋市だったことを考えると、なかなか興味深い現象です。
 今回の例会もバラエティーに富んだ内容で、毎回充実した例会となっています。例会後の二次会も参加者が多く賑やかですが、最近では三次会も参加者が多く場所探しが大変でした。また、二次会から参加される「熱心」な方もおられ、驚かされます。例会の内容は次の通りです。

〔古田史学の会・8月度関西例会の内容〕
○ビデオ鑑賞 歴史でたどる日本の古寺名刹「海の道」
○研究発表
1. 孔明「出師の表」と岳飛・『なかった─真実の歴史学』創刊号を見て・守備範囲外(豊中市・木村賢司)
2. 「速吸門」についての若干の整理(川西市・正木裕)
3. サヌカイトと屋島訪問ー古田武彦先生同行記ー(豊中市・大下隆司)
4. 続・白雉改元の史料批判(京都市・古賀達也)
5. 熊本県浄水寺の平安時代石碑2(相模原市・冨川ケイ子)
6. さ迷える五十鈴の宮(大阪市・西井健一郎)

○水野代表報告
 古田氏近況・会務報告・阿胡根能浦は鹿児島県阿久根市か・他(奈良市・水野孝夫)