第2897話 2022/12/18

天孫に君臨する菩薩天子

 昨日はエル大阪(大阪市中央区)で「古田史学の会」関西例会が開催されました。来月はキャンパスプラザ京都6階(ビックカメラJR京都店の北)で開催します。午後は恒例の新春古代史講演会(注)を同施設4階で開催します。

 このところ研究ジャンルが広がり、ハイレベルの発表が続いている関西例会ですが、発表テーマをご覧になってわかるように、今月も様々な研究が発表されました。とりわけ、わたしが注目したのが日野さんの倭国(九州王朝)の政治思想についての研究です。やや説明や論理構造が難解だったこともあり、疑問意見が続出しましたが、多利思北孤が菩薩戒を受けたのは、「菩薩天子」となることにより、国内の天孫諸豪族の上位に立つためであるとする見解は鋭い指摘だと感心しました。
 仏教思想では仏や菩薩は諸天善神よりも上位であり、倭王(天子)は出家しなくても受戒できる菩薩天子となることにより、天孫降臨以来の多くの天神の末裔たちの上に宗教的にも世俗的にも君臨することができたというのが、日野説の論点です。この統治思想は隋の煬帝も持っていたとのことで、おそらく多利思北孤はそれに倣い、国内統治のために仏教を国家的に受容したことになります。ちなみに、王朝交代後の大和朝廷でも聖武天皇らにより採用されています。古代史と思想史を融合したこの日野さんの研究に注目しています。

 12月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔12月度関西例会の内容〕
①『隋書』俀国伝の二つの都 (姫路市・野田利郎)
②常世国と非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)について ―大原重雄氏の『日本書紀』の史料批判の方法をめぐって― (神戸市・谷本 茂)
③縄文語で解く記紀の神々・第九話 カグツチ神から生じた神々 (大阪市・西井健一郎)
④消された詔と移された事情(前) (東大阪市・萩野秀公)
⑤聖地の記述に隠された王朝交代 (茨木市・満田正賢)
⑥縄掛け突起や石棺の形状の系譜 (大山崎町・大原重雄)
⑦傾斜のある石棺 (大山崎町・大原重雄)
⑧今城塚古墳の特徴から垣間見える騎馬遊牧民の姿 (大山崎町・大原重雄)
⑨十七条憲法と「菩薩天子」イデオロギーの違い (たつの市・日野智貴)
⑩同時代史料で九州王朝の天皇はどう呼ばれていたか (八尾市・服部静尚)
⑪多賀城碑から「東西5月行、南北3月行」を検証する (川西市・正木 裕)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円(三密回避に大部屋使用の場合は1,000円)
 01/21(土) 会場:キャンパスプラザ京都(京都市下京区、ビックカメラJR京都店の北)

(注)
【令和5年 新春古代史講演会 よみがえる京都の飛鳥・白鳳寺院】
□日時 2023年1月21日(土) 午後1時開場~5時
□会場 キャンパスプラザ京都 4階第3講義室 定員170名
□主催 市民古代史の会・京都、古田史学の会・他
□参加費 500円(資料代) ※学生は学生証提示で無料
□講師・演題
 高橋潔氏(公益財団法人 京都市埋蔵文化財研究所 資料担当課長)
     「京都の飛鳥・白鳳寺院 ―平安京遷都前の北山背―」
 古賀達也(古田史学の会・代表)
     「『聖徳太子』伝承と古代寺院の謎」

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