「 古田史学の会 」一覧

第2302話 2020/11/22

『日本書紀』の「称制」記事を疑う

 昨日、福島区民センターにて「古田史学の会」関西例会が開催されました。次回12/19(土)はドーンセンターで開催します。
 今回の研究発表で最も興味深かったのが服部さんの『日本書紀』に見える「称制」の研究でした。『日本書紀』には神功と天智、持統による称制記事がありますが、中国史書に見える「称制」とは、まだ幼い天子の代理として母親(皇太后)などが政治を行うことを意味しています。他方、『日本書紀』では、天智や持統は前の天皇(斉明、天武)が亡くなってから「称制」しており、本来の意味での「称制」ではないことを疑問視され、持統は九州王朝の天子との関係における「称制」であったことを『日本書紀』は隠したとされました。「称制」の定義などについて反対意見も出されましたが、服部説はするどい着眼点であり、『古田史学会報』での発表が待たれます。
 例会後の懇親会では、関西例会をズームやスカイプにより配信することについて、意見交換がなされました。こちらも、実施に向けて検討を続けます。
 今回の例会発表は次の通りでした。なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔11月度関西例会の内容〕
①海女の玉取伝説(高松市・西村秀己)
②古事記・日本書紀の編纂に関する一考察(茨木市・満田正賢)
③元号の始まり(八尾市・服部静尚)
④称制とは何か(八尾市・服部静尚)
⑤昔話の主役の老人の意味と古代の家族構成について(大山崎町・大原重雄)
⑥書紀に探る蘇我氏東漸の痕跡(大阪市・西井健一郎)
⑦九州王朝の国号(京都市・岡下英男)
⑧『古事記』に見える「驛」記事(東大阪市・萩野秀公)
⑨『隋書』と俀国・多利思北孤・端政(川西市・正木 裕)

◎事務局長報告(正木事務局長)
(1)例会初参加者(2名)の自己紹介
(2)新入会員の報告
(3)八王子セミナー(古田武彦記念古代史セミナー2020)の報告(古賀・久冨さん)
(4)関西各地の講演会の報告と紹介
(5)南秀雄「古墳時代における都市化の実証的研究」(大阪市文化財協会のweb版紹介)
(6)福岡県古賀市船原古墳出土「玉虫入り馬具」、京都府与謝野町大風呂南1号墳出土「ガラス釧(くしろ)」報道の紹介
(7)五尺刀と糸島の宇陀(宇田川原)の紹介

◆「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費1,000円(「三密」回避に大部屋使用のため)
 12/19(土) 10:00~17:00 会場:ドーンセンター
 01/16(土) 10:00~12:00 会場:i-siteなんば ※午後は新春古代史講演会
02/20(土) 10:00~17:00 会場:福島区民センター(※参加費500円)

◆新春古代史講演会 2021年1月16日(土) 13:30~17:00 (受付開始13:00) 会場:i-siteなんば(大阪府立大学なんばキャンパス) 参加費1,000円 ※午前は関西例会。午前・午後通しの参加費も1,000円です。
 ①「道行き読法」と投馬国・狗奴国の位置〈仮題〉
  講師:谷本 茂さん(古田史学の会・会員)
 ②裏付けられた「邪馬壹国の中心は博多湾岸」〈仮題〉
  講師:正木 裕さん(古田史学の会・事務局長、大阪府立大学講師)
 ③古代戸籍に遺された二倍年暦の痕跡 ―『大宝二年籍』『延喜二年籍』の史料批判―〈仮題〉
  講師:古賀達也(古田史学の会・代表)

《各講演会・研究会のご案内》
◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 12/22(火) 18:30~20:00 「古代戸籍に記された超・長寿社会の謎 ―『大宝二年籍』『延喜二年籍』の真相―」 講師:古賀達也

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 12/22(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館交流ホールBC室
    「多利思北孤の時代⑤」 講師:正木 裕さん

◆「古代史講演会in八尾」 会場:八尾市文化会館プリズムホール 参加費500円
 01/09(土) 14:00~16:30 「白村江での敗戦と唐からやってきた進駐軍」「筑紫都督府と壬申の乱」 講師:服部静尚さん
 03/13(土) 14:00~16:30 「天皇と三種の神器」「王朝交代」 講師:服部静尚さん

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター
 12/08(火) 14:00~16:00 「未定」 講師:未定

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 12/01(火) 18:30~20:00 「周王朝から邪馬壹国へ ―『倭人伝』の官名『泄謨觚・柄渠觚・兕馬觚』の謎を解く」 講師:正木 裕さん
 02/02(火) 18:30~20:00


第2279話 2020/10/31

『多元』No.160の紹介

 本日、友好団体「多元的古代研究会」の会紙『多元』No.160が届きました。拙稿〝天武紀「複都詔」の考古学的批判〟を掲載していただきました。
 当号には、服部静尚さん(『古代に真実を求めて』編集長)の「天武天皇は筑紫都督倭王だった 後篇」や「古田史学の会」関西例会常連の論客、野田利郎さん(古田史学の会・会員、姫路市)の「倭人伝には『方向のない行程』が二つある」、上田市の吉村八洲男さん(古田史学の会・会員)の「『景行紀』を読む」など力作が並んでいます。関東や関西など各地の研究者による学問的交流の場としても、『多元』の紙面が役立っているようです。
 中でもわたしが注目した論稿が西坂久和さん(昭島市)の「ユーカラにいた二倍年暦」です。アイヌが二倍年暦を使用していたのではないかとする研究は従来からありましたが、それらを紹介しながら、更に考察を深められています。わたしも「新・古典批判 続・二倍年暦の世界」で「アイヌの二倍年暦」(『新・古代学』第8集 新泉社、2005年)を発表したことがあります。具体的には、菅江真澄『えぞのてぶり』と新井白石『蝦夷志』に見えるアイヌの二倍年暦の痕跡について紹介しました(「古田史学の会」HPに掲載)。
 今月開催される「古田武彦古代史セミナー2020」(八王子セミナー)でも、アイヌの二倍年暦について紹介する予定です。各地の研究者により、二倍年暦の研究が進められることを願っています。


第2277話 2020/10/29

辺境防備兵「戌人」木簡の紹介

 『古田史学会報』160号に掲載された山田春廣さんの論稿〝「防」無き所に「防人」無し〟によれば、「防人」は九州王朝(倭国)の畿内防衛施設「防」に配された守備兵とされ、他方、辺境防備の兵(さきもり)は「辺戌」と呼ぶのが適切とされました。そこで思い出したのですが、以前に読んだ木簡学会編『木簡から古代が見える』(岩波新書、2010年)に〝防人木簡〟の出土が次のように紹介されていました。

 〝これまで防人に関する資料は、これらの「万葉集」の防人歌をはじめ、『続日本紀』や法令などに限られ、列島各地の発掘調査においても、なぜか防人に関する資料は全く発見されず、ほとんどその実態はわかっていなかった。
 ところが、二〇〇四(平成一六)年、佐賀県の唐津湾に面した名勝「虹の松原」の背後の中原(なかばる)遺跡から“防人”木簡が全国ではじめて発見された。〟『木簡から古代が見える』88頁

 同書によれば、中原遺跡は肥前国松浦郡内にあり、魏志倭人伝にみえる末盧国の故地にあたります。古代から朝鮮半島に渡るための重要拠点とされています。出土した木簡は防人に関する名簿とのことですが、「防人」ではなく「戌人(じゅじん)」と書かれています。「延暦八年」(789年)とあることから8世紀末頃のものとされ、甲斐国から派遣された「東国防人」のことが記された名簿と見られています。
 この「戌人」木簡は、先の山田さんの考察が妥当であることを示しているようです。参考までに奈良文化財研究所「木簡データベース」から同木簡のデータを転載します。

【本文】・小長□部□□〔束ヵ〕○/〈〉□□∥○甲斐国□〔津ヵ〕戌□〔人ヵ〕○/不知状之∥\○□□家□□〔注ヵ〕○【「首小黒七把」】・○□□〈〉桑□〔永ヵ〕\【「□〔延ヵ〕暦八年○§物部諸万七把○§日下部公小□〔浄ヵ〕〈〉\○§□田龍□□〔麻呂ヵ〕七把§□部大前」】
【寸法(mm)】縦(269)・横(32)・厚さ4
【型式番号】081
【出典】木研28-212頁-(2)(木研24-153頁-(7))
【文字説明】裏面「首小黒七把」は表面の人名と同時に記されたかは不詳。
【形状】二度の使用痕残す。上端二次利用後さらに削って整形。左右二次利用後の削りヵ。
【遺跡名】中原遺跡
【所在地】佐賀県唐津市原字西丸田
【調査主体】佐賀県教育委員会・唐津市教育委員会
【遺構番号】SD502
【内容分類】文書
【国郡郷里】甲斐国
【人名】物部諸万・日下部公小(浄)・□田龍(麻呂)・(雀)部大前・首小黒・□□家□(注)・小長□部


第2276話 2020/10/28

2021年新春古代史講演会の予告

 「古田史学の会」役員会は恒例の新春古代史講演会(大阪市)の開催を決定しました。これまでのコロナ自粛から本格的な活動再開へと舵を切りたいと思います。とは言え、行政からの要請による必要な対策は継続します。詳細は後日あらためてお知らせしますが、下記の内容で準備を進めています。
 11月に開催される「古田武彦記念古代史セミナー2020(八王子セミナー)」へ関西から参加予定の3名を講師として、同じテーマを発表していただきます。関東(八王子市)までは遠くて参加しにくい関西の皆様には、同セミナーの発表内容を聞ける良い機会となるのではないでしょうか。多くの皆様のご参加をお願い申し上げます。

《2021年新春古代史講演会の概要》
□日時 1月16日(土)の午後 ※午前中は関西例会を開催します。
□会場 I-siteなんば(大阪府立大学なんばキャンパス)
 ※「定員の半分まで」の使用制限があるため、広い部屋を予約しました。
□参加費 1000円
□講師:講演テーマ ※古田武彦記念古代史セミナー(八王子セミナー)と同テーマ。
 谷本茂さん(古田史学の会・会員):「道行き読法」と投馬国・狗奴国の位置
 正木裕さん(古田史学の会・事務局長、大阪府立大学講師):裏付けられた「邪馬壹国の中心は博多湾岸」
 古賀達也(古田史学の会・代表):古代戸籍に見える二倍年暦の影響―「延喜二年籍」「大宝二年籍」の史料批判―


第2268話 2020/10/22

『九州倭国通信』No.200のご紹介

 「九州古代史の会」の会報『九州倭国通信』No.200が届きましたので紹介します。まずは、記念すべき200号の発刊をお祝いしたいと思います。九州王朝の故地で活動されている同会は「市民の古代研究会・九州」の流れをくんだ歴史ある会です。わたしたち「古田史学の会」とは、諸事情により疎遠となっていましたが、関係者のご尽力を賜り、2016年から友好団体として交流を再開しました。互いに切磋琢磨して学問と交流を深めたいと願っています。
 同号には拙稿「九州年号『大化』金石文の真偽論 ―『大化五子年』土器の紹介―」を掲載していただきました。前号掲載の「九州年号『朱鳥』金石文の真偽論 ―三十年ぶりの鬼室神社訪問―」の続稿です。「大化五子年」土器は茨城県岩井市矢作の冨山家が所蔵しているもので、高さ約三〇センチの土師器で、その中央から下部にかけて
 「大化五子年
   二月十日」
の線刻文字が記されています。これは九州年号の「大化五子年」(699年)銘を持つ同時代金石文で、九州年号と九州王朝の実在を示す証拠の土器です。
 なお、九州には「大化元年」銘を持つ木製神獣が現存しています。大分県豊後大野市緒方町大化の大行事八幡社にあるもので、『太宰管内志』には次のように紹介されています。

 「大行事八幡社ノ社に木にて造れる獣三雙あり其一つの背面に年號を記せり大化元年と云までは見えたれど其下は消て見えず」(『太宰管内志』豊後之四・大野郡)

 ちなみに、当地地名の「大化」は、この神獣に由来するのではないでしょうか。この「大化元年」銘神獣を炭素同位体年代測定法で分析すれば、七世紀末の九州年号「大化」の同時代史料であることが判明するかもしれませんので、地元の皆様への調査協力も行いました。


第2264話 2020/10/17

7世紀末の王朝交替「禅譲」説

 本日、「古田史学の会」関西例会が開催されました。わたしは今月も発表させていただきました。テーマは古代中国における二倍年暦(二倍年齢)についてです。人の寿命を百歳と表記する周代史料群と、その半分の五十歳とする漢代史料群を紹介し、その寿命表記の二倍の差は、先行した周代の二倍年暦に由来すると考えざるを得ないとしました。服部さんや日野さんから厳しい質問や批判をいただきましたので、更なる史料根拠の明示と論証力の高上に努めたいと思います。
 大原さんからは、インドネシアのクラカタウ(クラカトア)火山の噴火の年が文献(『南史』)と火山灰層研究により535年であり、その噴火により地球全体の気候変動をもたらしたこと、火山灰層層位が遺跡の編年に使用できることなどが紹介されました。535年の翌年に九州年号が「僧聴」に改元されており、気象変動による農作物の不作や疫病発生などによる改元かもしれません。以前、「古田史学の会」で記念講演していただいた中塚武先生の酸素同位体比年輪年代法によれば、534年・536年・537年に日本では大干ばつが発生しているとのことで、これもクラカタウ火山の噴火の影響と思われます。
 日野さんからは『日本書紀』に見える三人の「倭姫(媛)」(垂仁天皇の娘、継体天皇の妃、天智天皇の皇后)について、個人名というよりも何らかの「官(役)職名」ではないかとする仮説が発表されました。倭人伝にも「使大倭」という国名の「倭」を用いた役職名が見えることなどを根拠とされました。有力な仮説ではないでしょうか。
 今回の発表で、わたしがもっとも注目していたのが服部さんの「九州王朝天子よりの禅譲で文武天皇は即位した」という仮説でした。先月、わたしが発表した〝王朝統合と交替の新古代史 ―文武・元明「即位の宣命」の史料批判―〟の内容と対応するものでしたので、結論には大賛成ですが、はたして論証できるのだろうかと半信半疑で聞いていました。ところが、『続日本紀』文武元年(697)十二月二八日条の正月拝賀(賀正礼)禁止命令を九州王朝の天子に対する拝賀禁止とされ、その二日後の二年正月一日には文武天皇への拝賀が「大極殿」で実施されたことを根拠に、文武は天皇即位時に九州王朝から禅譲を受けていたとされました。この論証により服部説は成立しており、有力な見解と思われました。
 今回の例会発表は次の通りでした。なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔10月度関西例会の内容〕
①継体・安閑・宣化期の二つの可能性について(茨木市・満田正賢)
②九州王朝天子よりの禅譲で文武天皇は即位した(八尾市・服部静尚)
③大噴火と天岩戸神話と埴輪祭祀(大山崎町・大原重雄)
④トランプ大統領の過ちと聖武天皇の過ち(川西市・正木 裕)
⑤「倭姫」という称号について(たつの市・日野智貴)
⑥消息往来―書簡の読みと所在の考察(京都市・岡下英男)
⑦二倍年暦と「二倍年齢」の歴史学 ―周代の百歳と漢代の五十歳―(京都市・古賀達也)
⑧「博徳書書内の「驛」記事について」の検証の続き(東大阪市・萩野秀公)
⑨深草の屯倉記事について(東大阪市・萩野秀公)

◆「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費1,000円(「三密」の回避に大部屋使用のため)
 11/21(土) 10:00~17:00 会場:福島区民センター(※参加費500円)

《各講演会・研究会のご案内》
◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 10/20(火) 18:30~20:00 「能楽の中の古代史(3)」 老松~飛梅と筑紫の神松伝承~ 講師:正木 裕さん

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 10/27(火) 10:00~12:00 会場:奈良新聞社西館3階
    「多利思北孤の時代③ 「聖徳太子」の「遣隋使」はなかった」 講師:正木 裕さん
 11/17(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館交流ホールBC室
    「多利思北孤の時代④」 講師:正木 裕さん
 12/22(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館交流ホールBC室
    「多利思北孤の時代⑤」 講師:正木 裕さん

◆「古代史講演会in八尾」 会場:八尾市文化会館プリズムホール 参加費500円
 11/03(火・祝) 14:00~16:00 ①「大化の改新」と難波京 ②条坊都市はなぜ造られたのか 講師:服部静尚さん

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター
 11/10(火) 14:00~16:00 「なぜ蛇は神なのか」 講師:大原重雄さん
             「法隆寺薬師像は実は釈迦像だった」 講師:服部静尚さん
 12/08(火) 14:00~16:00 「未定」 講師:未定

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 12/01(火) 18:30~20:00 「周王朝から邪馬壹国へ ―『倭人伝』の官名『泄謨觚・柄渠觚・兕馬觚』の謎を解く」 講師:正木 裕さん

《古田武彦記念古代史セミナー2020》(八王子セミナー)
 11/14~15 大学セミナーハウス(東京都八王子市)
 新型コロナ対策として、Zoomを使ったオンライン+現地参加の「ハイブリッド方式」での開催となりました。オンライン参加6,000円、現地参加15,000円。


第2259話 2020/10/12

『古田史学会報』160号の紹介

 本日、『古田史学会報』160号が届きましたので紹介します。わたしは近江関連の論稿二編、「西明寺から飛鳥時代の絵画『発見』―滋賀県湖東に九州王朝の痕跡―」と「近江の九州王朝 ―湖東の『聖徳太子』伝承―」を発表しました。近年、滋賀県湖東地域からは飛鳥時代に遡る瓦の出土などが続いており、九州王朝との関係がうかがわれ、目が離せません。
 会報冒頭を飾った服部さんの「改新詔は九州王朝によって宣勅された」は関西例会で発表された研究で、7世紀末の九州王朝から大和朝廷への王朝交替に関わるものであり、注目されています。例会では賛否両論が出されており、これからの討論での丁寧な掘り下げと展開が期待されます。
 山田さんは久しぶりの会報登場です。ともに「さきもり」(辺境防備の兵)と訓まれてきた「防」と「防人」の従来説の理解に対して疑問を呈され、「防」は九州王朝(倭国)の首都圏(畿内)を防衛する版築土塁などの防衛施設であり、「防人(さきもり)」はその「防」に配された防備兵のこととされました。『日本書紀』に見える「防」と「防人」の悉皆調査に基づく仮説であり、方法論にも結論にも説得力を感じました。
 谷本稿も関西例会で発表された仮説で、意表をつくものでした。従来、「不記」と考えられてきた『二中歴』「年代歴」の虫食い部分の字を「不絶」とする新説です。従来説の「不記」が妥当とするわたしの見解とは異なりますが、立論のための方法論が従来にない巧みなもので、学問的刺激を受けました。
 160号に掲載された論稿は次の通りです。投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚程度)に配慮され、テーマを絞り込んだ簡潔な原稿とされるようお願いします。

【『古田史学会報』160号の内容】
○改新詔は九州王朝によって宣勅された 八尾市 服部静尚
○「防」無き所に「防人」無し ―「防人」は「さきもり(辺境防備の兵)にあらず」― 鴨川市 山田春廣
○ 西明寺から飛鳥時代の絵画「発見」―滋賀県湖東に九州王朝の痕跡― 京都市 古賀達也
○欽明紀の真実 茨木市 満田正賢
○近江の九州王朝 ―湖東の「聖徳太子」伝承― 京都市 古賀達也
○『二中歴』・年代歴の「不記」への新視点 神戸市 谷本 茂
○「壹」から始める古田史学・二十六
 多利思北孤の時代Ⅲ ―倭国の危機と仏教を利用した統治― 古田史学の会・事務局長 正木 裕
○『古田史学会報』原稿募集
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会・関西例会のご案内
○各種講演会のお知らせ
○2020年度会費納入のお願い
○編集後記 西村秀己


第2246話 2020/09/29

『東京古田会ニュース』194号の紹介

『東京古田会ニュース』194号が届きました。同号には拙稿「大化の改新詔と王朝交替」を掲載していただきました。同稿では、『続日本紀』の文武天皇「即位の宣命」や『日本書紀』の大化二年改新詔などの分析に基づいて、7世紀末の九州王朝から大和朝廷への王朝交替について考察しました。まだ初歩的な研究段階で不十分で未完成の論稿ですから、これからも修正や論究を深めたいと思います。
 服部静尚さん(『古代に真実を求めて』編集長)の論稿「継体天皇と女系天皇」も掲載されていました。現在の女系天皇反対論や容認論に継体天皇の皇位継承例が取り上げられることもあり、現代史からも興味深い研究です。なお、同稿は「古田史学の会」関西例会で口頭発表され論争となったテーマで、論点整理を含めた検証が待たれます。
 中村通敏さん(福岡市)の論稿「『史記』の『穆王即位50歳説』について」は、わたしや古田先生の古代中国や『論語』における二倍年暦説を批判したもので、なかなか興味深い内容でした。たとえば、そこで紹介された中国の国家的研究プロジェクトによる「穆王の即位年齢20歳」説は、『史記』の「50歳即位」記事との比較(2.5倍)から、周王朝の天子の年齢が二倍年暦を淵源とする「二倍年齢」で『史記』に記述されていたことの証明にもなりそうです。この点、稿をあらためて詳述します。


第2236話 2020/08/20

明治天皇の即位の宣命と「不改常典」

 先日の「古田史学の会」関西例会では『続日本紀』元明天皇の即位の宣命に初めて見える「不改常典」について研究発表しました。その要旨は、天智の近江朝が九州王朝からその権威を引き継いだ宣言こそ「不改常典」の内実ではないかとするものでした。そしてそれは「禅譲」に近いものではないかと推定しました。
 しかし、『日本書紀』は九州王朝の存在や、天智がその権威を継承したことを隠していますし、宣命で述べられた天智天皇が定めた「不改常典」という言葉さえも掲載していません。ですから、『日本書紀』成立後(720)の聖武天皇や孝謙天皇らの即位宣命にも「不改常典」のことが記されてはいるものの、初代の神武天皇を近畿天皇家の権威の淵源とする『日本書紀』の大義名分と、天智天皇が定めた権威の淵源「不改常典」との関係が不明瞭です。
 ところが、この天智天皇が定めた法(「不改常典」法)と『日本書紀』の大義名分の両方含む即位の宣命があります。それは慶應四年(1868)八月二十七日に発布された明治天皇の即位の宣命です(翌九月に「明治」に改元)。当該部分を紹介します。

 「掛(かけまくも)畏(かしこ)き近江の大津の宮に、御宇(あめのした)しろしめし、天皇の初め賜ひ定め賜へる法の随(まま)に、仕え奉(まつる)と仰せ賜ひ授け賜ひ」
 「橿原の宮に御宇しろしめし、天皇の御(おん)創(はじ)めたまへる業(わざ)の古(いにしへに)基(もとづ)き、大御世を弥(いや)益々に、吉(よ)き御代と固(かため)成(な)し賜はむ」

 このように、近世においても天智天皇と神武天皇の二人が皇室の歴史的権威の淵源とされていることは興味深いことと思います。

【明治天皇の即位の宣命 原文】
 「現神止大洲国所知須、天皇我詔旨良万止宣布勅命乎、親王諸臣百官人等、天下公民衆聞食止宣布。掛畏伎平安宮爾、御宇須倭根子天皇我、宜布此天日嗣高座乃業乎、掛畏伎近江乃大津乃宮爾、御宇志、天皇乃初賜比定賜倍留法随爾、仕奉止仰賜比授賜比、恐美受賜倍留御代々乃御定有可上爾、方今天下乃大政古爾復志賜比弖、橿原乃宮爾御宇志、天皇御創業乃古爾基伎、大御世袁弥益々爾、吉伎御代止固成賜波牟、其大御位爾即世賜比弖、進毛退毛不知爾恐美坐佐久止宣布大命乎、衆聞食止宣布。(後略)」


第2235話 2020/08/19

王朝統合と交替の古代史論争

 本日、「古田史学の会」関西例会が開催されました。わたしは久しぶりの発表です。会員の皆さんの発表を優先するために、なるべく例会での発表は遠慮していたのですが、正木裕さん(古田史学の会・事務局長)からの要請もあり、「洛中洛外日記」で連載した文武・元明「即位の宣命」の史料批判について発表させて頂きました。厳しい質問や批判もよせられましたが、新たな発見もあり、有意義でした。
 今回の例会では、服部静尚さん(『古代に真実を求めて』編集長)からの、大化二年(646)改新詔の舞台は難波宮で、九州王朝による七世紀中頃のものとする研究発表は説得力があり勉強になりました。同改新詔は九州年号の大化二年(696)に出されたものが、『日本書紀』編纂時に「大化」年号ごと50年遡らされたとわたしは考えてきましたが、今回の服部さんのご指摘により、それほど単純なものではなく、詳細な見直しが必要であることに気づきました。自説の誤りや不十分さに気づくことができるのも、関西例会の醍醐味で、ありがたいことです。
 正木さんの発表は、謡曲・能などの古典芸能に強い正木さんならではのものでした。能楽「老松」が九州王朝の近江遷都の傍証になるというもので、会報での発表が待たれます。
 今回の例会発表は次の通りでした。なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。発表希望者も増えていますので、早めに西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔9月度関西例会の内容〕
①欽明紀の真実(茨木市・満田正賢)
②女王国論(姫路市・野田)
③古くて新しい今城塚古墳(大山崎町・大原重雄)
④能楽「老松」と九州王朝の近江遷都(川西市・正木 裕)
⑤改新詔は九州王朝によって難波宮で宣勅された(八尾市・服部静尚)
⑥王朝統合と交替の新古代史 ―文武・元明「即位の宣命」の史料批判―(京都市・古賀達也)
⑦博徳書内の「驛」記事について(東大阪市・萩野秀公)

◆「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費1,000円(「三密」の回避に大部屋使用のため)
 10/17(土) 10:00~17:00 会場:ドーンセンター
 11/21(土) 10:00~17:00 会場:福島区民センター(※参加費500円)

《各講演会・研究会のご案内》
◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都
 10/20(火) 18:30~20:00 「能楽の中の古代史」 講師:正木 裕さん

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 09/29(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館
    「多利思北孤の時代② 仏教を梃とした全国統治」 講師:正木 裕さん
 10/27(火) 10:00~12:00 会場:奈良新聞社西館3階
    「多利思北孤の時代③ 「聖徳太子」の「遣隋使」はなかった」 講師:正木 裕さん

◆「古代史講演会in八尾」 会場:八尾市文化会館プリズムホール
 10/03(土) 14:00~16:00 ①「古代瓦と飛鳥寺院」 ②「法隆寺の釈迦三尊像と薬師像」 講師:服部静尚さん
 11/03(火・祝) 14:00~16:00 ①「大化の改新」と難波京 ②「条坊都市はなぜ造られたのか」 講師:服部静尚さん

◆「泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター
 10/13(火) 14:00~16:00 「疫病と古代の戦争 ―『聖徳太子』は天然痘で薨去した」 講師:正木 裕さん
 11/10(火) 14:00~16:00 「なぜ蛇は神なのか」 講師:大原重雄さん
             「法隆寺薬師像は実は釈迦像だった」 講師:服部静尚さん
 12/08(火) 14:00~16:00 「未定」 講師:未定

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター
 10/06(火) 18:30~20:00 「疫病と古代の戦争 ―『聖徳太子』は天然痘で薨去した」 講師:正木 裕さん
 12/01(火) 18:30~20:00 「周王朝から邪馬壹国へ ―『倭人伝』の官名『泄謨觚・柄渠觚・兕馬觚』の謎を解く」 講師:正木 裕さん

《古田武彦記念古代史セミナー2020》(八王子セミナー)
 11/14~15 大学セミナーハウス(東京都八王子市)
 新型コロナ対策として、Zoomを使ったオンライン+現地参加の「ハイブリッド方式」での開催となりました。オンライン参加6,000円、現地参加15,000円。