2014年12月14日一覧

第838話 2014/12/14

2014年の回顧

 『古田史学会報』

 「古田史学の会」では2014年も優れた研究が数多く報告されました。その回顧として『古田史学会報』(120〜125号)に掲載された論文を改めて解説したいと思います。
 まず印象的なこととして、6回の会報中、122〜125号で1面冒頭を飾ったのが正木裕さんの次の論文でした。いずれも1面掲載にふさわしい内容の好論です。
○亡国の天子薩夜麻 (122号)
○海幸・山幸と「吠ゆる狗・俳優の伎」(123号)
○前期難波宮の築造準備について (124号)
○盗用された任那救援の戦い
 -敏達・崇峻・推古紀の真実-(上)(125号)
 この他にも次の論文を正木さんは発表されました。
○「末廬国・奴国・邪馬壹国」と「倭奴国」
 -何故『倭人伝』に末廬国の官名が無いのか- (120号)
○万葉歌「水鳥のすだく水沼」の真相 (120号)
○『倭人伝』の里程記事は正しかった
 -「水行一日五百里・陸行一刻百里、一日三百里」と換算- (121号)

 これほどのハイペースで論文を発表すると、普通はレベルが落ちるのですが、正木さんは高い研究水準を維持されており、素晴らしいことと思います。
 古田先生の講演録(要旨)も次のものを収録できました。いずれもわたしがモバイルワープロにより、講演同時入力したものです。講演を聞きながらのワープロ同時入力はかなり疲れるのですが、タイムリーな会報掲載のためにはこの方法が最も合理的です。
○「古田史学の会」新年賀詞交換会
 古田武彦講演会・要旨 (120号)
○筑紫舞再興30周年記念「宮地嶽 黄金伝説」のご報告
 古田武彦講演要旨・他 (121号)
○八王子セミナー報告(実況同時記録)(125号)
 今年、めきめきと頭角を現されたのが服部静尚さんでした。次の論文を発表されました。内容も様々で興味深く、かつ論証も成立しており、特に「鉄の歴史と九州王朝」は考古学的資料としても貴重で秀逸でした。これからの活躍が期待されます。
○日本書紀の中の遣隋使と遣唐使 (123号)
○鉄の歴史と九州王朝 (124号)
○石原家文書の納音は古い形か (125号)

 わたしからは次の論文を発表しました。いずれも「洛中洛外日記」に掲載したものを編集転載したものです。自ら云うことでもありませんが、忙しい仕事の合間をぬって、よく書けたと自分では納得しています。
○九州年号「大長」の考察 (120号)
○「ウィキペディア」の史料批判 (120号)
○一元史観からの太宰府「王都」説
 -井上信正説と赤司善彦説の運命- (121号)
○納音(なっちん)付き九州年号史料の出現
 -熊本県玉名郡和水町「石原家文書」の紹介-(121号)
○前期難波宮の論理(122号)
○条坊都市「難波京」の論理(123号)
○「邪馬台国」畿内説は学説に非ず(124号)
○九州王朝説と瓦の考古学 -森郁夫著『一瓦一説』を読む-(125号)
○「五十戸」から「里」へ(125号)

 以上の他、常連組からは次の論文が発表されました。札幌市の阿部さんも健闘されました。
○「天朝」と「本朝」
 「大伴部博麻」を顕彰する「持統天皇」の「詔」からの解析 下  札幌市 阿部周一(120号)
○神代と人代の相似形Ⅱ
 もうひとつの海幸・山幸  高松市 西村秀己(121号)
○『三国志』の「尺」 姫路市 野田利郎(121号)
○「高御産巣日神」対馬漂着伝承の一考察  松山市 合田洋一(123号)
○「魏年号銘」鏡はいつ、何のために作られたか
  -薮田嘉一郎氏の考えに従う解釈-  京都市 岡下英男(124号)
○「春耕秋収」と「貸食」
 -「一年」の期間の意味について- 札幌市 阿部周一(125号)

 論文ではありませんが、旅行や遺跡見学報告も掲載され、会報に華を添えました。このような投稿を期待しています。
○筑紫舞見学ツアーの報告
 -筑紫舞三〇周年記念講演と大神社展= 今治市 白石恭子(122号)
○トラベルレポート出雲への史跡チョイ巡り行  東大阪市 萩野秀公(124号)

 最後に他の研究誌から次の転載を行いました。これからも優れた論文の転載を行いたいと思います。
○【転載】「九州年号」を記す一覧表を発見
 -和水町前原の石原家文書-
 熊本県玉名郡和水町 前垣芳郎(122号)

 以上、2014年の『古田史学会報』も、古田学派らしい論文を多数掲載することができました。投稿者や会員の皆様に感謝いたします。来年もふるってご投稿ください。


第837話 2014/12/14

『古田史学会報』

  125号の紹介

 本年最後の『古田史学会報』125号が発行されましたのでご紹介します。正木さん服部さん阿部さん常連組は快調です。わたしからは11月に開催された古田先生の八王子セミナーの報告、九州王朝説から考察した古代瓦について、そして「五十戸制」を九州王朝説の立場から考察した論稿を発表しました。
 正木稿は『日本書紀』推古紀などに見える朝鮮半島(任那)関連記事が九州王朝史書からの盗用であることを論証されました。服部稿は熊本県和水町で発見された納音付き九州年号史料の納音が現在伝わっている納音よりも古い形式であるとされました。阿部稿では「倭人伝」に見える「春耕秋収」について論究されました。全体として、やや難しい論稿がそろいましたが、九州王朝・多元史観研究において重要なテーマです。
 掲載テーマは次の通りです。会員の皆さんの投稿をお待ちしています。ページ数や編集の都合から、短い原稿の方が採用の可能性は高くなりますので、ご留意ください。

〔『古田史学会報』125号の内容〕
○盗用された任那救援の戦い
 -敏達・崇峻・推古紀の真実-(上) 川西市 正木裕
○八王子セミナー報告(実況同時記録) 京都市 古賀達也
○石原家文書の納音は古い形か  八尾市 服部静尚
○九州王朝説と瓦の考古学
 -森郁夫著『一瓦一説』を読む- 京都市 古賀達也
○「春耕秋収」と「貸食」
 -「一年」の期間の意味について- 札幌市 阿部周一
○「五十戸」から「里」へ  京都市 古賀達也
○賀詞交換会(古田先生を囲んで)のお知らせ
 日時 2015年1月10日(土)午後1時30分
 会場 大阪府立大学 i-siteなんば 2階
 参加費 1000円  終了後懇親会(有料)
○『古田史学会報』原稿募集
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会 関西例会のご案内
○編集後記  西村秀己