2018年08月18日一覧

第1723話 2018/08/18

銅鐸埋納の「雨乞い祭祀」説

 本日、「古田史学の会」関西例会がi-siteなんばで開催されました。9〜10月もi-siteなんば会場、11月は福島区民センターです。今回の関西例会も何人もの方により大論争が繰り広げられました。わたしはおかげさまで、賛否は別としても問題を深く掘り下げることができ、知見が広がり認識も深まりました。
 大原さん(古田史学の会・会員、大山崎町)からは古代における「雨乞い」祭祀についての研究発表が毎月のようになされていますが、今回も銅鐸は「雨乞い祭祀」として埋納されたもので、何らかの理由による緊急避難的に埋納されたものではないとする仮説が提起されました。わたしは結論には賛成できなかったのですが、根拠としてあげられた様々な事例(和歌山県日高郡の「雨乞山銅鐸」など)や資料の中に初めて知ることが多かったのでとても勉強になりました。わたしからの質問が長引き、お昼休みの時間にずれ込んだため、司会の西村秀己さん(古田史学の会・全国世話人、高松市)から、「質問は時間を見てするように」とご注意を受けてしまいました。
 満田さん(古田史学の会・会員、茨木市)や服部さん(『古代に真実を求めて』編集長)による、森博達さんの『日本書紀』α群・β群編纂説への批判やそれに基づかれた谷川清隆さん(国立天文台)の「天群・地群」研究に対する異見なども、森説や谷川説への認識を深める上で勉強になった発表でした。
 驚いたのが、正木さん(古田史学の会・事務局長)の発表に対する論争過程で、古田学派の最古参研究者である谷本茂さん(古田史学の会・会員、神戸市)から、『後漢書』倭伝に見える「倭国之極南界也」に対する古田説の「倭国の南界を極(きわむ)る也(や)」という読みは間違っているという見解が表明されたことです。谷本さんは従来説通り、「倭国の極南界なり」の読みが正しいとされたのです。古田学派の重鎮からの異見でしたので、わたしも正木さんも驚いたのですが、それならぜひ関西例会でそのことを発表してほしいと要請しました。
 休憩時間に谷本さんにお聞きしたところ、古田先生はこの新説(倭国の南界を極るや)検討でかなり迷った末に発表されたとのこと。「それならなぜそのときに先生に新説は間違っていると言わなかったのですか」と追求すると、「言ったけれども先生は受け入れられなかった」とのことでした。「それはそうでしょうねえ」とわたしは相づちを打ち、その情景が目に浮かぶようでした。
 わたしも何度かこわごわと先生に反対意見を申し上げた経験があり、そのときは先生からの厳しい批判や叱責を頂くのが常でした。ですから、最長老「弟子」の谷本さんでもそうだったのだろうなと思った次第です。なお、ほとんどの場合は古田先生のご意見の方が正しかったので、わたしたち「弟子」にとって、先生にもの申すのはかなりの「覚悟」が必要でした。今となっては懐かしい思い出の一コマです。
 8月例会の発表は次の通りでした。
 なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。また、発表希望者も増えていますので、早めに西村秀己さんにメール(携帯電話アドレスへ)か電話で発表申請を行ってください。

〔8月度関西例会の内容〕
①神宮暦の紹介(大阪市・西井健一郎)
②『水滸後伝』顛末記(高松市・西村秀己)
③谷川清隆氏の天群・地群の考察に関する疑問(茨木市・満田正賢)
④『書紀』中国人述作説を検証する -雄略紀の「倭習」-(八尾市・服部静尚)
⑤銅鐸と武器形青銅器の祭祀と終焉について(大山崎町・大原重雄)
⑥新刊『「日出処の天子」は誰か』(ミネルヴァ書房)の紹介(豊中市・大下隆司)
⑦『播磨國風土記』の「奪谷(うばひたに)」の再検討(神戸市・谷本茂)
⑧「那須國造碑」からの『日本書紀』(持統紀)の絶対年代批判(神戸市・谷本茂)
⑨よみがえる日本の神話と伝承(3) 天孫降臨から神武東征まで(川西市・正木裕)
⑩新・万葉の覚醒(2) -倭国(九州王朝)の大王(天子)は何故「伊勢王」と呼ばれたか-(川西市・正木裕)

○正木事務局長報告(川西市・正木裕)
 『発見された倭京 太宰府都城と官道』出版記念講演会(9/09大阪i-siteなんば、9/01東京家政学院大学千代田キャンパス、10/14久留米大学)の案内・『古代に真実を求めて』22集原稿募集・9/04「古代大和史研究会(原幸子代表)」講演会(講師:正木裕さん)・9/26「水曜研究会」がスタート(毎月第四水曜日に開催、豊中倶楽部自治会館)・『「日出処の天子」は誰か』(ミネルヴァ書房)の紹介・11/10-11「古田武彦記念新八王子セミナー」発表者募集・8/27「誰も知らなかった古代史」(森ノ宮)の案内・「古田史学の会」関西例会会場、9〜10月はi-siteなんば、11月は福島区民センター・その他