2019年12月04日一覧

第2050話 2019/12/04

古代の九州と信州の諸接点

 『東京古田会ニュース』189号の橘高修さん(東京古田会・事務局長、日野市)の論稿「古田武彦の『八面大王論』(幷私論)」に触発され、古代史に関わりそうな九州と信州の接点について、わたしが知るところの事物や研究テーマを紹介します。
 直近では、「洛中洛外日記」1720話(2018/08/12)「肥後と信州の共通遺伝性疾患分布」において、遺伝性の病気の集積地が熊本県と長野県に特異な分布を示していることを紹介しました。もちろん、その原因が古代にまで遡るのかは不明ですが、不思議な分布状況で注目しています。この病気のことは「洛中洛外日記」読者のSさん(長崎県在住の医師)からお知らせいただいたもので、それは家族性アミロイドポリニューロパチーという遺伝性の病気です。なぜか熊本県と長野県に大きな分布が見られ、その分布事実は両者に血縁的関係があることを示唆しているようなのです。
 次に、これはわたしが発見したのですが、熊本県天草市と長野県岡谷市に「十五社神社」という神社が濃密分布していることです。御祭神は異なるようですが、「十五社神社」という名称の一致が九州と信州の特定地域に濃密分布しているのは偶然とは考えにくいことです。
 更に、筑後一宮で有名な高良大社の御祭神「高良玉垂命」を祀る「高良神社」が信州に濃密分布していることが従来から指摘され、その調査が信州の古田学派の研究者により精力的に進められています。近年では、信州以外(淡路島・他)にも「高良神社」の分布が発見されており、今後の研究の進展が期待されます。
 また、古代系図として有名な「異本阿蘇氏系図」中に信州の有力者である「金刺氏系図」が繋がっていることも知られています。これは両地域の関係が古代に遡ることを示す貴重な史料です。
 この他にも、信州に遺る「安曇(あずみ)」地名や「お船祭り」など北部九州の安曇族との関係を感じさせるものが散見されます。橘高さんが紹介された「八面大王」を「ヤメ大王」のこととし、九州王朝の筑紫君薩野馬や磐井のこととする仮説も提唱されており、検討が必要です。まさに多元史観・古田史学の出番と言えるのではないでしょうか。

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