2025年04月12日一覧

第3471話 2025/04/12

久住猛雄氏の「弥生の硯」大阪講演が決定

 近年、弥生時代の硯(すずり、板石硯)が福岡県を中心に発見され、弥生時代の文字使用を示す遺物として注目されています。従来は砥石と判断されていた板状の石製品を再調査すると、硯であることが判明しました。この大発見をしたのが、福岡市埋蔵文化財センター・文化財主事の久住猛雄(くすみたけお)さんです。「洛中洛外日記」などでも紹介してきました(注①)。

 久住さんと共に調査した柳田康雄さんの「倭国における方形板石硯と研石の出現年代と製作技術」(注②)によれば、柳田さんや久住さんによる、板石硯の調査結果が報告されており、その出土分布は示唆的です。両氏らが発見した弥生時代・古墳時代前期の硯・研石の総数は現時点で200個以上、出土地は次の通りです。

○福岡県 糸島市13例(研石3)以上、福岡市17例(研石1)、春日市3例、筑紫野市29例(研石6)、筑前町22例(研石5)、朝倉市4例、小郡市3例(研石1)、筑後市4例(研石1)、北九州市20例、築城町8例(研石1)。
※福岡県合計123例以上。
○佐賀県 唐津市4例(研石1)、吉野ヶ里町2例(研石1)、基山町1例。
○長崎県 壱岐市11例(研石4)。
○大分県 日田市1例。
○熊本県 阿蘇市2例。
※福岡県以外の九州合計21例。
○広島県 東広島市2例。
○岡山県 10例(研石2)。
○島根県 松江市8例(研石1)、出雲市2例、安来市3例。
○鳥取県 鳥取市3例。
○石川県 小松市20例。
○兵庫県 丹波篠山市1例。
○大阪府 泉南市1例、高槻市3例。
○奈良県 田原本町2例、桜井市1例、橿原市1例、天理市5例。
※九州以外合計62例。

 他県を圧倒する福岡県の出土件数は、古田先生の邪馬壹国博多湾岸説を支持するものですから、数年前から「古田史学の会」では久住さんに講演を打診してきました。この度、縁あって本年6月22日(日)に開催予定の『列島の古代と風土記』出版記念大阪講演会(会場:大阪公立大学なんばサテライト I-siteなんば)で講演していただけることになりました。

 講演会のテーマは「弥生時代の都市と文字文化」で、久住さんと正木裕さん(元大阪府立大学理事・講師、「古田史学の会」事務局長)のお二人に講演していただきます。演題は下記の通りです。講演会の詳細は別途ご案内します。講演会は会員以外の方も参加できます(一般参加費1000円、「古田史学の会」会員は無料)。なお、講演会終了後に「古田史学の会」会員総会を開催しますので、会員の皆さんのご出席をお願いします。

○久住猛雄 氏 弥生時代における「都市」の形成と文字使用の可能性 ―「奴国」における二つの「都市」遺跡、および「板石硯」と「研石」の存在についてー
○正木 裕 氏 伝説と歴史の間 ―筑前の甕依姬・肥前の世田姫と「須玖岡本の王」―

(注)
①古賀達也「洛中洛外日記」二〇七五~二〇七六話(2020/02/05~06)〝松江市出土の硯に「文字」発見(1~2)〟
同「洛中洛外日記」2248話(2020/10/03)〝『纒向学研究』第8号を読む(1)〟
「松江市出土の硯に「文字」発見 ―銅鐸圏での文字使用の痕跡か―」『古田史学会報』157号、2020年。
「田和山遺跡出土「文字」板石硯の画期」『古田史学会報』162号、2021年。
同「文字文化が花開く弥生の筑紫」『九州倭国通信』号205、2022年。
②柳田康雄「倭国における方形板石硯と研石の出現年代と製作技術」『纒向学研究』第8号、桜井市纒向学研究センター、2020年。