2025年11月08日一覧

第3548話 2025/11/08

多元史観で見える蝦夷国の真実 (4)

  ―都加留は蝦夷国の拠点か―

 なぜ小領域の都加留(津軽)が、広領域の麁蝦夷(あらえみし)・熟蝦夷(にきえみし)と肩を並べて唐の天子に紹介されたのでしょうか。しかも三種の蝦夷の冒頭に紹介されています。紹介する側(倭国の使者)の立場からすれば、使者に同行し、「毎歳本國の朝に入貢」している熟蝦夷から紹介するのが当然のように思われますが、最も遠方で小領域の都加留を最初にするのは不自然ではないでしょうか。更に言えば、国名(領域名か)表記に使用された漢字にも〝格差〟が見えます。

 都加留の場合、一字一音表記であり、どちらかといえば「都」のように好ましい漢字が使用されています。比べて、麁蝦夷・熟蝦夷の場合は「蝦」や「夷」のように貶めた漢字です。また、蝦夷は三種あると紹介しているのに、都加留には蝦夷という表記が付けられていません。三種が同等であれば、せめて「都加留蝦夷」と表記すべき所でしょう。

 もしかすると、都加留には蝦夷国全体を代表(象徴)するような「都」があったのでしょうか。九州王朝(倭国)や大和朝廷(日本国)からの侵略に備えて、本州で最も遠い都加留に蝦夷国の拠点を置いたとしても不思議ではないように思いますが、これは思いつきに過ぎませんので今後の検討課題です。(つづく)

〖写真説明〗津軽の十三湖。遠くに岩木山が見える。大和朝廷による蝦夷国侵攻図。