第3196話 2024/01/07

新年の読書、松本清張「古代史疑」 (1)

 ―古田古代史誕生の契機―

 毎年、年始には新たに数冊の本を読むことを「新年の読書」と称して、年頭の行事としてきましたが、今年は書籍の編集・執筆のため1冊しか読めませんでした。それも年明けの三が日が済んでからになりました。ご近所の枡形商店街の古書店が五日に開きましたので、のぞいたところ、松本清張全集(注①)が売りに出ており、ばら売りで1冊百円のお買い得価格。その中に『古代史疑・古代探求』があり、迷わず購入しました。

 コアな古田ファンであればご存じのはずですが、親鸞研究を専門としていた古田先生が古代史に参入されるきっかけとなったのが、松本清張氏の「古代史疑」という『中央公論』の連載(昭和41年6月~42年3月)でした。同連載は主に邪馬台国をテーマとしており、その最初の方に、「邪馬台国」という国名が倭人伝の原文には「邪馬壱国」であることが記されており、古田先生はそのことを松本清張氏が連載の中でどのように説明されるのかを楽しみにしていたとのこと。ところが、最後まで説明はなかったので、自ら調べてみたことが、名著『「邪馬台国」はなかった』(注②)の発刊に至ったと先生は語っていました。
そうした経緯を聞いていたので、五十年前に同連載が全集に収録され、その全集を古書店で偶然に発見し、新年に入手できたのは幸いでした。同書の外見や紙はやや変色していますが、書き込みなど全くなく、読まれた痕跡もない新品同様の良本でした。恐らく、清張ファンの方が全集を購入したものの、全ては読めずに書棚に飾ったままのものが、所蔵者の没後に古書店に流れたのではないでしょうか。(つづく)

(注)
①松本清張『古代史疑・古代探求 松本清張全集33』文藝春秋、1974年。
②古田武彦『「邪馬台国」はなかった ―解読された倭人伝の謎―』朝日新聞社、昭和四六年(1971)。ミネルヴァ書房より復刻。

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