日本学術振興会での講演の思い出
定年退職して4年が過ぎましたので、仕事関係の書類や書籍の整理を始めました。現役時代はビジネスでの出張の他に、各地の学会や業界団体で講演したのですが、そのときの論文集や予稿集がいくつも出てきました。そのなかに、2016年に京都市(キャンパスプラザ京都)で開催された日本学術振興会の繊維・高分子機能加工第120委員会で講演したときのものがありました。同会の前身は、昭和天皇から学術奨励のために下賜された下賜金により、昭和7年(1932年)に創設された財団法人日本学術振興会です。
伝統ある会からの講演依頼ですので大変名誉なことと思い、「機能性色素の概要とテキスタイルへの展開」というテーマで講演しました。企業機密に抵触しないよう用心深く発表したのですが、同分野の国内トップクラスの研究者の集まりですから、とても緊張しました。そこで一策を講じ、話のつかみとして、化学や高分子とは異分野で、わたしの得意な古代染色技術を読み込んだ万葉歌や国宝の天寿国繍帳(奈良県中宮寺蔵)に使用された天然色素の話から入り、そうした化学技術の延長線上にある最先端機能性色素の紹介を行いました。
終了後、京都タワーホテルのレストランで打ち上げがあり、古田史学のファンで、わたしのこともよく知っているという某大学の先生(同大学付属高校校長)と偶然にもお会いできました。しかも、同大学付属高校では、わたしが開発した近赤外線透撮防止用の機能性色素を使用したスクール水着を採用しているとのことで、思い出深い一夕となりました。。
これからは天職の化学から遠ざかり、日本古代史・古田史学の研究と「古田史学の会」運営に一層専念します。後ろ髪を引かれる思いですが、化学関連の資料や書籍は少しずつでも古書店へ売却しようと思います。