第3451話 2025/03/16

「貞慧伝」の白鳳年号の新解釈

 昨日、 「古田史学の会」関西例会が豊中自治会館で開催されました。4月例会の会場は東成区民センターです。

 今回の報告で意表を突かれたのが、「貞慧伝」に見える「白鳳」に関する谷本さんの新解釈でした。藤原鎌足の長男、定恵(貞慧・定慧・貞恵)の最古の伝記『藤家家伝』(760年頃成立)中の「貞慧伝」に記された「白鳳」年号の実年代に関する考察です。

 これまでの九州年号研究では、「貞慧伝」の「白鳳」は『日本書紀』の「白雉」(650年・庚戌~654年・甲寅)年号を「白鳳」に置き換えた、九州年号「白鳳」(661年・辛酉~683年・癸未)の後代改変型と理解されてきました。その根拠は、「貞慧伝」に見える貞慧の入唐を「白鳳五年歳次甲寅」(654年)、帰国を「白鳳十六年歳次乙丑」(665年)とする記事の干支が『日本書紀』の「白雉」の元年干支「庚戌」と対応していることでした。すなわち、年号は書き変えられているが、干支で示された実年代は信用できるとする立場です。わたしもそのように考えてきました。

 今回の谷本さんの発表によれば、書き変えられたのは干支の方で、「白鳳五年」「白鳳十六年」という部分は九州年号「白鳳」の実年代、655年と676年を示しているとするものでした。こちらの方が、これまで疑問視されていた諸問題をうまく説明できるとされました。この新解釈は、わたしには思いも付かなかったもので、驚きました。かなり有力な新説ではないでしょうか。論文発表が待たれます。

 今月の例会の司会進行は、西村さんが所用のため上田さん(古田史学の会・事務局)に先月に引き続いて担当していただきました。新年度の四月からは上田さんが司会を正式に担当しますので、皆さんのご協力をお願いします。なお、発表申請窓口は西村さんが当面は担当しますので、お間違えなきようお願いします。

 3月例会では下記の発表がありました。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔3月度関西例会の内容〕
①百済、馬韓と九州王朝 (茨木市・満田正賢)
②「科野・蕨手文」からの推察 (上田市・吉村八洲男)
③朝日新聞の「磐井の乱」記事と『先代旧事本紀』 (川西市・正木 裕)
④推古紀の裴世清の行程を解読する (姫路市・野田利郎)
⑤定恵の伝記と「倭国年号」 ―天智紀の紀年の再考― (神戸市・谷本 茂)
⑥「郡」記事と「阿蘇ピンク石石棺」 (東大阪市・萩野秀公)
⑦仲哀帝と息長帯比売 (大阪市・西井健一郎)
⑧実は戦後に形成されていた単一民族神話論 (大山崎町・大原重雄)

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
04/19(土) 10:00~17:00 会場 東成区民センター
05/17(土) 10:00~17:00 会場 大阪市立中央会館
06/21(土) 10:00~17:00 会場 東成区民センター

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〔3月度関西例会の内容〕

1,百済、馬韓と九州王朝 (茨木市・満田正賢)
https://youtu.be/3snb42bOZbE
https://youtu.be/qeL2CTBIVXs

2,「科野・蕨手文」からの推察 (上田市・吉村八洲男)
https://youtu.be/E_0LYs84MZY
https://youtu.be/e1H0_Ydo4jA

3,朝日新聞の「磐井の乱」記事と『先代旧事本紀』 (川西市・正木 裕)
https://youtu.be/cgnHru8CAOo
https://youtu.be/m3bIwb2c-uM

4,推古紀の裴世清の行程を解読する (姫路市・野田利郎)
https://youtu.be/zXa8paE8VNo
https://youtu.be/1hnZKCOigAc

5,定恵の伝記と「倭国年号」 ―天智紀の紀年の再考― (神戸市・谷本 茂)
https://youtu.be/hBAKVjDvL70
https://youtu.be/Dh8M-VMsslQ

6,「郡」記事と「阿蘇ピンク石石棺」 (東大阪市・萩野秀公)
https://youtu.be/MR9EdyUFbPs

7,仲哀帝と息長帯比売 (大阪市・西井健一郎)
https://youtu.be/K0IDgbGiZAE
https://youtu.be/5EwO7aXSawE

8,実は戦後に形成されていた単一民族神話論 (大山崎町・大原重雄)
https://youtu.be/_gUwaGs4An0
https://youtu.be/N1yfeFyu_vU

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