第3535話 2025/09/26

盛岡と岡山は言語的には姉妹都市か

 今日は新幹線で青森県に向かっています。東京駅で東北新幹線はやぶさに乗り換え、車中でこの「洛中洛外日記」を書いています。明日、弘前市で開催される『東日流外三郡誌の逆襲』出版記念講演会(秋田孝季集史研究会主催)で講演します。

 現役時代は出張で東北新幹線や山形新幹線をよく利用していましたので、車窓から見える東北地方の山々の風景は懐かしいものです。西日本のなだらかな稜線とは異なり、東北や四国の山々には〝ぼた山〟のようにボコボコと盛り上がった形状の山が目につきますが、これは火山地帯特有の風景ではないでしょうか。

 ちなみに、東北や四国では、山(ヤマ)のことをモリ(森、盛)と称する例が少なくなく、この「○○モリ」という山名(動詞の「盛る」の名詞形か)はかなり古い時代(恐らく縄文時代)まで遡る言葉と思われます。青森県の最高峰、岩木山(1625m)も「阿蘇部(アソベ)の森」と呼ばれており、これは「阿蘇部山」と同義であり、共に火山である九州の阿蘇山との関係も興味深いものです。ちなみに、北海道には「○○モリ」という山名は見えません。沖縄には少しあるようです。
ここまで書いたら仙台駅を通過していました。「次は盛岡です」と車内アナウンスがあって気づいたのですが、この地名の盛岡の「盛(もり)」も「山」のことではないでしょうか。もしそうであれば、盛岡とは〝山と丘〟のこととなります。岡山県の岡山は〝丘と山〟のことでしょうから、盛岡市と岡山市は言語的には姉妹都市と言えそうです。

 この論理を突き詰めると、青森も「青山」であり、決して〝青い森(Blue Forest)〟のことではないことになります。そうすると、青森市付近に〝あおもり〟と呼ばれる(呼ばれた)山があるはずです。ご存じの方があればご教示下さい。なお、当地に〝青い森(Blue Forest)〟があったので、それを地名にしたという、後から取って付けたような説があることは知っていますが、わたしは納得していません。なぜなら、〝青い森〟のような林や森は青森市内に限らず全国各地にありますが、だからといって全国各地に「青森」という地名があるわけではないからです。おそらく、「青(あお)」もBlue の意味ではないと思います。言語本来の意味を解明する「言語考古学」の重要なテーマの一つと考えています(注)。

(注)古賀達也「『言語考古学』の成立(序説) ―「山」と「森」について―」『古田史学会報』22号、1997年。

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