第3611話 2026/03/25

五戸弁護士からの手紙

 ―和田家文書「偽作」裁判の想い出―

 先月、とても懐かしい方からお便りが届きました。青森市在住の五戸雅彰さんです。五戸さんは和田家文書「偽作」裁判で和田喜八郎氏の弁護を担当した方で、三十年ほど前に石塔山神社で一度だけお会いした記憶があります。その折り、お聞きしたことですが、信頼する先輩弁護士からの「東日流外三郡誌は喜八郎さんに書けるようなものではない」という言葉により、弁護を引き受けることを決めたとのこと。誠実で正義感溢れる若手弁護士でした(わたしより年長)。

 困窮していた和田家からは弁護活動の着手金しか支払われなかったようですが、青森地裁・仙台高裁・最高裁へと続いた弁護活動を事実上無報酬で行っていたのではないでしょうか。古田先生も弁護のため、五戸さんの要請に基づき、無報酬で陳述書や鑑定書を書き続けました。先生のご指示により、わたしも生まれて初めて陳述書なるものを二通書き、仙台高裁に提出しました。なお、最高裁の判決文には次のようにあります。

 「主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

     理由
上告代理人石田恒久、同吉沢寛の上告理由について

 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものであって、採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。」

 最高裁まで上告された裁判に勝った瞬間でした(最高裁第三小法廷)。このときの様子を、昨年上梓した『東日流外三郡誌の逆襲』(八幡書店)に「第9章 「和田家文書」裁判の真相 付:仙台高裁への陳述書2通」として収録しました。同書を五戸さんに送付したのですが、そのお礼状が届きました。その一部をご紹介します。

 〝昨夏、弘前市でご講演の折、頂いたお電話が通じなかったそうで、大変失礼致しました。古田先生がご健在の頃、古田先生に「古賀さんに続くお弟子さんをぜひ育てて下さい。」と何度か申し上げたことがありましたが、御高著及び同封頂きました古田史学会報を拝読しますと、多くの方々が活発に活動されておられるようで、泉下の古田先生も安堵して見守って下さっていることと思います。〟

 お手紙には古田先生から五戸さんへの私信も同封されており、「わたしの手元で死蔵するよりも、古賀様にお渡しするのが最善と考え、お送り申し上げます。ご研究のお役に立てば幸いです。」の一文が添えられていました。
『東日流外三郡誌の逆襲』の執筆動機について、「運命と使命の一書 ―東日流外三郡誌の逆襲―」(『東京古田会ニュース』226号、2026年)に次のように書きました。

 「東日流外三郡誌の真実を訴えるわたしたちの声は、NHKなどの大手メディアをも巻き込んで繰り返される偽作キャンペーンの前にはあまりに微力だった。〝東日流外三郡誌は喜八郎氏による偽作〟という声が世を席巻した。そして三十年の歳月は、証言者(津軽の古老たち)、和田家当主の喜八郎氏、有力な支持者だった藤本光幸氏、そして古田武彦先生の物故をもたらした。気がつけば、平成の津軽行脚のことをよく知るものはわたし一人となっていた。」

 しかし、わたしはもう一人の〝生き証人〟五戸弁護士のことを忘れていました。執筆中の続編『東日流外三郡誌の挑戦』には、五戸さんの一文も賜りたいと考えています。

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